日本最古のトーナメント第83回日本プロ選手権は豪州の左打ち、アダム・ブランドが優勝。レフティーの優勝は大会史上初と面白い結末だが、日本ツアー、これでいいのか! 武藤のコラム


 83回を迎えた日本で最も古い歴史を持つ「日本プロゴルフ選手権 日清カップヌードル杯」は豪州の32歳、左打ちのアダム・ブランドが16アンダー、2位に3打差をつけ優勝した。豪州プレーヤーの優勝は大会史上初。ブランドは、もともと右利きだが、ゴルフをはじめた子供のときクロスハンドの右打ちで打ったのがきっかけで、左手を下にしたまま左打ちにした、という“変わり種”。「利き腕が右の左打ち」はフィル・ミケルソン、古くはニュージーランドのボブ・チャールスが有名。余談になるが、左打ちにせず、子供の時のままのクロスハンドショットを見たかった、と思うのは筆者だけだろうか。

 それにしても左打ちは日本では本当に少ない。ブランドは「豪州では半分近くのゴルファーがレフティー(左打ち)なんだけどね、日本はおかしい」とそっちの方を疑問視した。確かに日本では、クラブが少ない、という理由もあったが、ゴルフは右と決まっていた節がある。みんな右が当たり前、と思っていた。日本では左利きをギッチョ、ギッチョパンなどと言って特別視したようなところがある。箸は右、茶碗は左という食事の作法もあり、左利きなのに“右使い”に矯正したものだ。その点、欧米は使いやすい方を尊重し、左で字を書いても強制的に治したりしない。最近の日本ではあまりこだわらなくなっているが・・・。

 それはともかく、日本ツアー開幕3戦がすべて外人チャンピオン。ニュージーランド、韓国、豪州の選手が勝ち日本勢は形無しだ。あまりの惨状に倉本昌弘・大会会長は「実力者が予選で姿を消し、若手も伸びていない。選手諸君は死にもの狂いで練習してほしい」と苦言を呈し発奮をうながした。当然のことだ。

 関係者ももっと危機感を持つべきだ。そもそもプロ日本一を争う大会がシーズンも浅い3戦目、さらに次週の関西オープン、そのあとのツアー選手権とチャンピオンシップを争うビッグイベントが目白押しというのはおかしい。その年のナンバーワンを決めるにためには年間の実績をもとに行うべきだろう。前年の実績、成績で選ばれたものが争うのではチャンピオンシップとはいいがたい。

小林伸太郎

小林伸太郎

 日本プロ選手権、昨年はツアー第6戦として行われた。それが今年3戦目になったのはスポンサーが減ったためだ。日本ツアーはかつて37戦あったのが今季は25戦。これ以上、述べる必要はないだろう。

 いまツアー全体でツアーのあり方を立て直すときだ。松山、石川が米ツアーに去り人材不足を嘆くより、ツアー自体を立て直す時だ。日程を練り直したい、そのためには開催時期を握るテレビ局との折衝は不可欠だ。ツアー開催の主体をツアーが握る。この当然のことが出来ていないツアーは世界で日本だけ。このままでは存続は危うい。

 暗い話題になったが、4位に小林伸太郎、9位に額賀辰徳、かつての日本アマチャンピオンがようやく顔を出した。このクラスの低迷も日本の元気をそいでいる。死にもの狂いで練習してほしい

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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