先日のサマンサタバサレディス(茨城・イーグルポイントGC)で前田陽子の通算2勝目を見届けた。勝利を決めるパーパットを沈めると、普段は控えめな30歳が右拳をブンブン振って喜んでいた。ゴルフ界ではよく「2勝目を挙げてこそ本物」と言われる。前田も「1勝目は『たまたま』と言われていた。正直2勝目はできないと思っていた」と昨年11月の初V以降、苦しんできた胸の内を明かした。
「自然体」という言葉がピッタリ当てはまる人だと思う。自身のゴルフスタイルを「がっついて空回りするのは嫌だし、冷静な判断ができる方が勝てる。だからチャンスが来るまでずっと待つ」と分析する。無駄なリスクは負わない。この大会、ボギーは第1ラウンドの2つだけ。2日目以降は一つも落とさず伸ばし続けた。
小中で続けた書道は7段の腕前だという。最近は知人に竿をもらい、釣りを趣味にしている。6下旬、千葉・木更津の防波堤でした初めての海釣り。気になる釣果は「15センチぐらいの小魚が1匹」だった。そして「すぐ海に帰してあげた」という言葉を聞き、私も「前田さんらしいな」と思った。
初優勝時は時給約800円の段ボール工場でアルバイトしていたことが話題となった苦労人。優勝賞金で母・貴子さんに沖縄旅行をプレゼントし、「次は北海道に連れて行ってあげたい」と笑っていた。会見では「もう2、3年できればいいかな」と言っていたが、もっともっと白星を重ねていってほしい。
◇武藤 瑞基(むとう・みずき)
静岡県生まれ。静岡大卒業後、2009年に報知新聞社入社。2年目に担当したプロ野球のロッテがいきなり日本一になり、静岡支局時代は磐田がJ2に降格するなど 嵐を呼ぶ 男。15年からゴルフ担当。