ツアー直送便 第十九回 アジア発、夢舞台へのアマチュアの熱い挑戦


 今月初めに、男子ゴルフのアジアパシフィックアマチュア選手権を香港のクリアウォーターベイ・クラブ(6513ヤード、パー70)で取材した。優勝者に来年4月の海外メジャー初戦マスターズ(ジョージア州オーガスタナショナルGC)切符、2位までに全英オープン最終予選出場権が与えられる大舞台は、気温30度の暑さ以上の活気に満ちていた。

 37の国と地域から15歳から57歳までの120人が参加した。アジアへのさらなるゴルフの普及に向けてマスターズ委員会やR&Aの幹部や関係者も大挙して詰めかけ、熱視線を送っていた。ほとんどの選手はその国の代表ウェアを着用。さらに代表コーチも帯同し、ゴルフが112年ぶりに正式競技に復活する、来夏のリオデジャネイロ五輪の“プレ大会”の様相も呈していた。中国や韓国、豪州の選手団は「来年には五輪もある。国の代表としてここに来ているから」「コースを想定して風の対策やアプローチ練習もしてきた」などと代表チーム一丸で臨んでいた。

 一方で日本は所属大学のウェアを着て臨んだ選手が大半で、代表ウェアを毎日着ていたのは2人だけ。代表コーチも不在で20年東京五輪開催に向けて、貴重な国際経験を積む機会としては準備や意識の面で少し残念に映った。それでも出場6人の学生トップアマは、全員が予選を突破した。

 

 

 なかでも、8月の日本学生選手権を制した長谷川祥平(22)=大阪学院大4年=が存在感を示した。第2ラウンド(R)に8バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの65をマークし6位に浮上。だが、台風接近に伴う暴風に見舞われた第3Rは73とスコアを落とした。最終Rは台風の暴風雨で中止となり、通算3アンダーで日本勢最高の12位となった。俳優・松坂桃李似のイケメンは「日本には無い海沿いのコースで楽しかったですし、海外には色んなすごいコースがあるんだなと知れました」と振り返った。

 

 会場は岸壁の上に展開し、18ホール全てから海がのぞめる“東洋のペブルビーチ”との異名も持つシーサイドコースだった。海風がプレーに大きく影響を及ぼしたが、11アンダーで初優勝した金誠(中国)ら上位陣は第3Rの風の中でも伸ばしたのも事実。長谷川は「僕にはまだ風への対応力が足りなかった。すべてが上手く、強くないとマスターズには出られませんね」と唇をかんだ。

 

 3年連続3度目の出場で、13年大会では3打差の2位だった。10、11年の松山英樹に続く日本人2人目の大会制覇はならず。「今思うと、あの時(13年に)逃したチャンスは大きかったなと思いますね。この経験を生かして、早くプロで出られるように頑張ります」と前を向いた。

 来年のプロ転向を視野に現在、来季の日本ツアー出場権獲得を目指して予選会を受験中だ。「世界で闘うには、誰にも負けない自分の武器を見つけないと。僕はアイアンショットが得意で自信があるので体を作りつつ、磨いていきたいですね」。身長181センチの大器の来年以降の活躍が非常に楽しみだ。

 

 ◇榎本 友一(えのもと・ともかず)
1976年7月26日、東京都生まれ。中大卒業後、サンケイスポーツ文化報道部を経て2003年に報知新聞社入社。箱根駅伝担当、北京五輪担当などを経て13年からゴルフ担当。男子ツアー初取材だった同年つるやオープンでは、尾崎将司のエージシュート&松山英樹のプロ初Vを目撃する強運男。

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