アダム・スコットが2週連続優勝の快挙、今年のマスターズは豪州旋風が吹き荒れそうだ 武藤のコラム


 米男子プロツアー世界選手権シリーズの「キャデラック選手権」は豪州のアダム・スコットが12アンダー、2位のババ・ワトソン(米)を1打下し優勝した。マキロイを加えた3強の争いは最終ホールまでもつれ込み、スコットは2メートルのパーパットを沈めて勝った。スコットは前週の「ホンダクラシック」に次いで2週連続優勝、米ツアー通算13勝目、完全復活を遂げた。松山英樹は73で回り41位から35位に順位を上げた。心配された股関節の故障は心配ないようだ。

 スコット、マキロイ(英)、ワトソンの争いにベテラン45歳のミケルソン(米)が加わり見ごたえのある争い。開催コースはあのドナルド・トランプがオーナーのフロリダ・トランプナショナル・ドラールのモンスターコース。屈指の難コースに試合は荒れた。

 スコットは前半池に2回つかまる2ダブルボギーで苦戦。マキロイがパットに悩む間にワトソンが首位を奪う激戦となったが、終盤、首位に立ったスコットは18番、第2打をあわやウオーターハザードぎりぎりのピンチから2メートルに寄せ、見事カップイン、激戦に終止符を打った。

 かつてワールドランキングのトップに君臨したこともあるスコットは、その後、マキロイにその座を譲るなど苦戦、ここ数年は若手のスピース、ファウラーらの後塵を拝すことが多かった。しかし、ここにきて先週のホンダクラシック、そして今週と2週連続優勝の偉業。所属がユニクロということもあり秋の日本オープンに2年連続出場,日本人のファンも多い人気者だ。

 勝因は苦手のパット開眼だ。長尺パターなど体の一部に支点を置くことを禁じたルールが施工された2016年だが、長尺パターで胸に支点を置く、アンカリング打法のスコット。昨シーズンは長尺を標準のノーマルパターに代え、様々なパッティングフォームを試した。そんなモデルチェンジは、しかし、成功とはいえないまま今季を迎えていたが、先週から短いパターの標準ストロークが完全に身についていた。

 ロングパター用に用意された彼専用のネオマレット形状ヘッドを、そのまま”短尺“にし重量調整で全体重量を軽くするとこれが合ったようだ。グリップを太くし右手を上からかぶせるクローグリップにしたのもよかったのだろう。かぶせた右は人差し指と中指の間にシャフトを通す工夫も功を奏したか、バーディーが量産されている。

 話は飛ぶが今大会、マキロイはクロスハンドへモデルチェンジ。しかし、3日目までは快調だったフィーリングは最終日、ロングパットの距離感が悪く苦笑いが漏れていた。にわか仕込みはやはり通用しないと思った。その点、スコットは昨年1年間、試行錯誤している。苦労は報われる、ということだろう。

 スコットの快進撃。これでマスターズは面白くなった。13年に次いで2度目の優勝達成の目は濃厚だ。松山との相性もいい。米1勝目の2014年、「メモリアルトーナメント」はスコットとの激闘から達成された。マスターズで再現されたらハッピーだ。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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