リオで五輪種目に112年ぶり復活したリゴルフ。男子は英国のジャスティン・ローズが優勝した。世界最古のゴルフ競技、全英オープンを開催するゴルフ発祥の英国から金メダリスト誕生は歴史的に意味がある。ローズは父親の仕事の関係で駐在先の南アフリカのヨハネスブルグで生まれ、拠点をロンドンに移した17歳の全英オープンにアマで出場し、4位に食い込んで世界デビューした。その翌週にプロ入りしたが、プロの水になじむまで時間がかかり、プロ初優勝まで5年、米ツアーに参戦して初優勝を挙げるまで10年かかった。だが、その間欧州ツアーの賞金王となり米ツアーでは07年のマスターズ優勝など5勝を挙げた。今回はワールドランキング上位で英国代表となった。今年のマスターズ優勝のダニー・ウイレットと二人で参戦、見事金メダルを獲得した。心からおめでとうの言葉を送りたい。
日本は池田勇太(日清食品)がローズと13打差の3アンダー21位。片山晋呉(イーグルポイントGC)は8オーバーの54位に終わった。松山英樹(LEXUS)が出場していれば、の声も聞こえるが、メジャー優勝を悲願とし米ツアーを最優先するトップ選手たちは、五輪復帰を喜びながらも五輪参加にいたらなかった。メダルへのモチベーションが整うまで時間はかかろう。次回、東京には気迫を整え、誰もが最強の布陣で臨めばいい。
今回の池田、片山の代表は、日本ゴルフ界の現状の中で最強戦力だった。43歳の片山は日本ツアーの中心選手として20余年活躍。5度の賞金王だ。東京五輪が決定したとき、日本ゴルフ界は片山主将、代表選手は松山と石川遼(カシオ)だ、と色めき立った。数々の目標を達成し“やる気”を見失っていた片山だったが、モチベーションを取り戻すきっかけとなった。それがリオのお鉢が回ってきての代表で戸惑いは明らかだった。池田は日本ナショナルチームのエースとして6年間、世界アマ選手権など先頭立って戦っできた。松山、石川ら若手の台頭までを懸命に支えた功労者だ。五輪の代表は当然だった。新設のリオのコースでの戸惑いもあったが、池田だったからこそ21位で締めることができた、と評価したい。「この経験を活かしプロゴルファーとして日本に帰ってから頑張っていきたい」リオの最終日に誓う姿が頼もしかった。参加することの意義とはこういうことだろう。今回の“知恵”を4年後に生かしてくれることだろう。
豪州、デンマーク、タイ、インドと優勝争いには多彩な国の健闘が目立った。コースの距離表示はヤードとメートルで表示された。ヤーデージとメートルの併用は、豪州やオセアニア地区などメートル制の国への配慮だったのだろう。ゴルフはまだまだ世界に広まっていないと感じた。
コースはアメリカの設計家がウエストエリアを多用、荒れ地をそのままにグリーンとフェアウエーを浮き上がらせ、バンカーは粒子の細かい砂にして目玉状態が多くなるよう演出、ハザードの怖さを際立たせた。気温差が激しくブラジルにリンクスコースが再現されたようで興味深かった。こうしたコースは最近の傾向で芝の養生などに莫大な費用がかかるのを避ける意図がある。どこの国でもこの仕様にすればコース造成、メンテナンスに費用がかからない。飛ぶ道具、技術の進歩などで広いコースを持っているところしか五輪が開催されないのではゴルフの普及はたかが知れている。コース造成、メンテナンスの廉価は必須条件だ。
4年後の東京は霞が関CCが舞台となるが、改造が加えられるのは必至。どんな日本のコースが出来上がるのか。既存のコースが、ゴルフの普及というテーマにどう取り組むのか。注目したい。
だが、ワールドランキングの上位者国、60人に絞った選手選考法は著しく興味をそぐ。五輪は国を代表する選手のメタルをかけたチャンピオンシップだ。賞金はない、名誉と参加意識が選手を揺り動かす。東京では代表選手は国の選考会で選ぶべきだ。今回の無味乾燥なランキングだけで選ぶ安易さは面白みに欠ける。国内の熱い代表選考会があってこその代表であろう。ゴルフの活性化は国内の元気が根底にあることが基本だ。東京五輪開催まであと4年。関係者は改革に国際的議論も巻き込んで世界規模で推進すべきだ。