男子メジャーの今季最終戦、第100回を迎えた伝統の「全米プロ選手権」は13日、セントルイスのベルリーブCC(パー70)で最終ラウンドを行い、今年の全米オープン王者、ブルックス・ケプカ(米)が16アンダーで優勝した。6月の全米オープンに次いで全米プロと合わせての2大メジャー制覇は18年ぶりの快挙。2連勝中の全米オープンと合わせメジャー3勝目の大快挙となった。
2位にはタイガー・ウッズが14アンダーで食い込み完全復活。終盤のプレーオフシリーズの出場権を獲得した。2連覇を狙ったジャスティン・トーマス(米)は6位だった。3人が決勝ラウンドに進んだ日本勢は松山英樹がこの日4アンダー66、通算4アンダーで35位。小平智は59位、池田勇太は65位に終わった。
タイガーが8バーディー、2ボギーの66で追い上げスコアボードで首位に並んだのは13番だった。メジャー14勝、ツアー79勝、賞金王10回。腰痛など4回の手術もあり、ここ10年はメジャー勝利から見放されているヒーローのカムバックに“レッツゴー、タイガー”の歓声が渦巻いた。
ケプカはタイガー一色の逆転ムードの中、落ち着いてプレー、見事にはねのけた。15番4メートルをねじこみ16番、288ヤードの“長いショートホール”を1メートルにつけ2連続のバーディーで16アンダー。粘る同組のスコットをも蹴落とした。大会前のドライバー飛距離が325・8ヤード、フェアウェーキープ率77パーセントと群を抜いていた。2日目63のベストスコアで首位に立ち、以後、首位を譲ることがなかった。完勝だった。
フロリダ生まれのフロリダ育ち、大学もフロリダ州立大、弟もプロの28歳。
米ツアーは15年の「フェニックスオープン」とあわせて4勝、そのうちメジャータイトル3勝と公式戦にめっぽう強い型破りなタイプの登場だ。
「(全米オープンの)2勝に加え3つ目もメジャー?信じられません」快挙に茫然としているようなホールアウト直後だった。「グリーンのセンターを狙ってグリーンに乗せることだけに集中した。コースはタフなのはわかっていたし第2ラウンドが雷雨で中断すらなど何が起こってもおかしくない状況。とにかく無理をしないで慎重にやったのがよかった」メジャーの勝ち方を知ったプレーヤーの言葉打。説得力があった。
320ヤードを超えるドライバーショットには定評があるが遅咲き。飛んで曲がる飛ばし屋の悲哀をあじわった苦労人。デビュー直後はPGAツアーに出られず3年間は欧州ツアーに出場した。
「タイガーの応援がすごいのがわかっていたので冷静にプレーすることだけを心掛けた。これからは普通のトーナメントも勝ちたいです」と振り返る素朴さが、なんともほほえましく、新鮮だった。この境地に立った今後、さらに何を見せようとしているのだろうか。
松山は流れが悪かった。「アイアンショットが悪い」と口に出し“不調”を訴えていたが、予選ラウンドを午後スタートに回ったことで出遅れ、翌日は雷雨中断の真っただ中で苦戦した。トーナメントはスタート時間による運、不運が付きまとう。だが、ショットに不安がある中、きっかけを探すものはひ弱になりがち。神経質になり、復活への集中心を求める中で出会う不運は癪(しゃく)のタネとなる。何をやってもうまくいかないことはある。
左親指の故障以来、良い流れがとまってしまったが、長いツアー生活ではだれもが1度ならず2度、3度と経験することである。そんなイラつきは今回進藤キディーを替えるなどの打開策にも表れているようだが、名コンビの復活が今後の立ち直りに不可欠と思う。コンビはコンビとしてこれはキャディの問題ではない。自分のことだ、自力で壁を乗り越えてほしい。最終日、4アンダー、66が出たが、明るい兆しである。「プレーウエル」良いプレーを、と励ますことになる。
2013年、同じコースで「全米プロシニア選手権」が行われ、井戸木鴻樹が優勝したセントルイスのベルリーブCCが今回の舞台であった。井戸木のやってのけた偉業が改めて思い起こされる。いつの日か、あの感動が日本選手に再び訪れんことを祈るのみである。