悪魔とたたかう石川遼のシーズン終了に想う ~バークレーズで今季PGAツアー終えた石川~ 武藤のコラム


 石川遼のPGAシーズンは終わった。年間王者を決めるフェデックス・プレーオフ第1戦の「バークレーズ」最終日、石川は5オーバー75、通算5オーバーの66位と振るわず次週の「ドイツバンク選手権」に進出できず、今季の米ツアー参戦を終えた。フェデックスポイント124位の今季、ぎりぎりで来季のシード権を守ったが、シーズンを通して苦戦を強いられた。石川は「苦戦したが、最後の2か月間は取り組んでいることができていた。この精度を高くして(10月からの)開幕戦から出たい」と前を向いた。

 米ツアーの「2015-2016シーズン」は10月に開幕、その初戦からの出場を明かした石川。秋シーズンたけなわの日本ツアーへの参戦もにらんで立て直しへ。シーズンの終わりは、夢挑戦への始まりだ。

 「バークレーズ」は全米プロ優勝のジェーソン・デー(豪州)が優勝、今季4勝、通算6勝をあげ、年間王者へまっしぐら。ジョーダン・スピース(米)とロリー・マキロイ(英国)のマネーランキング、ワールドランキング争いに一気に食い込んできた。この調子で最終戦の「ツアーチャンピオンシップ・バイ・コカ・コーラ」を勝てば4冠だ。面白くなった。

 5アンダー14位の松山英樹は最終日69、通算6アンダーの13位と一つ順位を上げた。さすがだが、今季はずーっとこんな調子だ。ティーショットが良ければパットが入らない。アイアンがピンにつくが、入らない。アプローチとパットは目に見えてよくなっているだけに、かみ合わせが悪いのだろう。スコアが伸びないのだ。 今季優勝争いといえるシーンがないもどかしさがシーズンを通して、ついて回っている。これがゴルフ、といえばいえなくもない。しかし、優勝がない。この現実には気持ちがへこたれる。松山にも、観ている側にもきつい。いらだつ、怒ったら終わりだ、と思うから余計に苛立つ。

 今大会はショットがいい。3番1メートル半、7番2メートル、12番パー5イーグル逃し、15番1メートルと4バーディーにはほれぼれした。が、1番でラフから寄せきれずボギー。5番、8番も同じようにラフに泣いた。かみ合わないのだ。

 開催コースはニュージャージー州プレイングフィールドCC。今大会は7012ヤード、パー70と距離の短いセッティングだった。が、ケンタッキーブルーグラスのラフはボールをすっぽり飲み込み上から見ても見えないタフさだった。「このクラスの人でもフィーリングの合わない日というのがあるんですね」「でもみんなアンダーパーで回っているのだからさすがですね」中継のNHK解説、田中泰次郎プロがため息をついていた。久しぶりにタフなラフは、起伏の激しい大きなグリーンへのアプローチを難しくした。選手はとまどっていた。慰めや同情が交差するシーンの連続が多かった。

ゴルフが変わった
そんなシーンを見てゴルフは変わった、と思った。今季は考えさせられるシーンが本当に多かった米ツアーだった。

 チェンバーベイの全米オープン、ウエスティンストレイツの全米プロは、スコットランドのリンクスをアメリカの丘陵地に移し替えたばかりにボールはあちこちへ踊りまくった。ピンそば30センチに落ちた球、スピンのきいたナイスショットが強い傾斜をはねると右サイドへ転がり、止まった先はグリーン右手前のがけ下。選手もギャラリーもはじめは笑っていた。しかし、そのうち呆れて何もいわなくなった。どうやらゴルフは違うゲームになりつつある。みんなそう思ったにちがいない。

 そして、今大会だ。ラフのタフさ。そしてグリーンのタフさ。そう、ゴルフは意地悪にあふれ錯覚やこれまでの常識や思い込みを排除してかかる我慢ゲームへの道を、はっきりと歩み始めていた、としか思えない。

 ジェイソン・デーとババ・ワトソン。中でも単独3位のババの独特のゴルフ観に傾倒する。そこには、従来の基本とか理論に左右されないイマジネーション、想像の世界しかないように思える。18番のワンオン狙いのティーショットを見たでしょうか!

 ババは右足前に置いた高いティーのボールを左足体重でかち上げた。ババは左打ち。後ろの足に体重を残すだけ残したくて、右足に一瞬ウエートを移すが、次の瞬間、左足をさらに後ろに移動すると両手を天に突き上げて見せた。究極のハイフェード、高い!

 高い球を打つイメージをスイングに具現すると、「これっきゃない」というスイングをやってのけるのだった。驚かない。これがババゴルフなのだ。しかし、非常識だ。まったく新しいゴルフ。ああ、これからこのゴルフを追求しないとやっていけないのか。ゴルファーを考えさせる悪魔のさらなる変身だ。

 松山と石川には心から同情する。こんなのと真っ向やりあうのだから。「お大事に」と衷心(ちゅうしん)から励ますしかない。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

最新のカテゴリー記事