日本では、下(最下位)から数えて2番目の人に与える賞が「ブービー賞」。しかし、本来の「ブービー(Booby)」の意味は、「間抜け(へたくそ)」とか「とんま」を表すもので、スペイン語の「間抜け、世間知らず」のボーボ(Bobo)が英国に伝わり、ブービー(Booby)に転じたものだという。つまり、「下から2番目」ではなく、「最下位」のこと。以前は最下位を賞する「ブービー賞」というのがあったが、ビリなのだから、賞品も記念品や参加賞に毛の生えた程度のものだった。しかし、それが日本に〝輸入〟されてからは、賞品は豪華なものになっていった。想像するに、最下位という〝不名誉〟を、「次には頑張ろうね!」という日本人らしい優しさが表れたもので、次回への〝発奮材料〟としたのだろう。
しかし、それがいつの間にか「最下位」にではなく、「下から2番目」にこの〝栄誉〟が与えられるようになった。というのも、ラウンド途中で大叩きなどやってしまって上位を望めないコンペ参加者が「どうせなら豪華な賞品がもらえる最下位になっちゃえ!…」と、大叩きを取り返す努力もせずに、投げやりなプレーで故意にビリを狙う輩(やから)が出現し始めた。そこで、日本では、故意に狙いにくい「最下位から2番目」にブービー賞を設定するようになったという。いかにも日本的だ。
これに関連するものに「ブービー・メーカー」というのがあるが、これは最下位の人を意味するもので「この人がいるからこそ〝下から2番目〟のブービー賞」が作り出された―ということで誕生した造語。とはいえ、ブービー賞が下から2番目に与えられるということも、ブービー・メーカーという和製造語も、海外では通用しないのでご注意を…。
◇古賀 敬之(こが・たかゆき)
1975年、報知新聞社入社。運動部、野球部、出版部などに所属。運動部ではゴルフとウィンタースポーツを中心に取材。マスターズをはじめ男女、シニアの8大メジャーを取材。冬は、日本がノルディック複合の金メダルを獲得したリレハンメル五輪を取材した。出版部では「報知高校野球」「報知グラフ」編集長などを歴任。北海道生まれ、中央大卒。