マスターズの松山英樹の敗因は日本全体の責任です 武藤のコラム


 「優勝するには何かが必要だ。その何かを探すのが松山英樹のこれからの課題となる」スポーツ報知、12日付の1面で前巨人軍監督の原辰徳さんがマスターズ、現地オーガスタからの手記に書いた。
 同感だ。原さんとは記者時代の1997年の全米オープンにご一緒した。現役を引退し“文化人1年目”の原さんがNHKのゴルフ中継解説で米メリーランド州のコングレショナルCCに滞在、こちらは報知の特派員として現地にいた。読売系列の兄弟カンパニー同士の間柄。スポーツ報知に今回同様、原稿をお願いしリポートのお手伝いを4日間した。
 原さんはゴルファーとしても一流の人だ。日本オープンを3回も開催の名門・相模原ゴルフクラブのクラブチャンピオン。巨人の4番、趣味ゴルフ、野球とゴルフの両道を極めた、稀な人だ。尊敬している。
 原さんには借りがある。世の中にはおかしいことが多い。現役時代4番・原がスランプになるとゴルフがよくない、と妙な批判が出たものだ。野球のホームランバッターでゴルフもトップアマ並みの腕前なら尊敬されてしかるべき、これが英米だったらもうそれだけで社会的立場はトップクラス。ところが、日本というところはおかしくて、「ゴルフばかりやっているからホームランが打てないんだ、バットが下から出るのはゴルフスイングの癖がでるせい」と、そこに結び付く。原さんにはゴルフがうまいばかりに迷惑をかけてしまっていた。ゴルフ側のマスコミとして申し訳ない、そんな気持ちが“借り”である。
 ゴルフは野球のオフの手慰み。それでハンデ0とか1。天才にして努力家なのだ。そこを理解しないで、しかめ面して一事に打ち込むのが良し、などという貧弱な差し出がましさに呆れたものだ。こういうのが多いからゴルファーがプレーするたびに1日800円の税金がかかる。2020年、東京五輪・パラリンピック大会を行う国でゴルフをやると税金を払う。そんな国は日本だけです。

 マスターズで松山が7位に終わった。やはりいらだちがあるのか、話の方向がOB気味に行きがちになったが、ほんとに惜しいチャンスを逃したと悔しい。と言っても結局は力不足。そこが課題として残るという結論だ。
 今回、感じたのは層の薄さだ。今回も含めこれで3年連続、松山一人しか出場できない日本のレベルダウンは否めなかった。薄い層、薄い技術、経験不足、戦略ミス、それもこれも薄い日本、味でいうなら薄味、精神的にはペラペラの紙のような軽さのせい。
 ウイレットという思わぬ伏兵が勝ったイングランドを見るがいい。2位タイのウエストウッド、4位ケーシー、松山と一緒に7位のフィッツパトリックさらに今大会、調子を崩したマキロイ、ローズが10位、なんと6人がトップ10入りした。
 層の厚さ、どっしりとした強さを感じた。イギリスはイングランド、スコットランド、ウエールズ、それに北部のアイルランドからなる連合国。スポーツ界ではひとくくりにイギリスあるいは英国と国名表示されるが、別々の国が集まった連合だ。ゴルフはスコットランドが発祥でイングランドは後発。そして、マスターズに関していうなら1996年、3勝目をあげたニック・ファルドに次いでウイレットで2人目のチャンピオンである。さして多い数ではない。だが、イギリスというゴルフ王国となって400有余年にわたり熱く歴史を作ってきた。ゴルファーの層、文化度の深さには舌を巻くしかない。
 ローアマに輝いたアメリカのデシャンポーの存在感も日本にはないものだ。若きアメリカ人、スピースと同年齢の若者のアイアンはすべて37・5インチの同じ長さに統一、ショットの円弧の大きさを一定にし、ロフトの変化によることだけで弾道の高さを調節、距離コントロールするという実践で昨年の全米アマを勝ち出場、アッと言わせた。今回、全体の21位でローアマとなった。また、中国のジン・チェン(16歳)がアジアアマを勝って出場してきたが、元をたどれば松山が切り開いた道。
 ベテランに関しても今回は充実していた。58歳7か月、ランガ―は3日間を終わって3位。最終日、松山と同組を回り松山が3番からボギー。ボギー、ダブルボギーと叩いたときには“どうなるか”とひやひやした。もしランガ―より順位を下げたら松山への批判は免れなかった。ランガ―が24位でほっとしたのは筆者だけではあるまい。同じ存在に、ラブ51歳、マイズ57歳もいたが、42位と42位だった。しかし、これはすごいことだ。本当に。何しろランガ―がマスターズで2勝目をあげたのが1992年。そして、その同じ年にスピースもデシャンボーは誕生しているのです。みんながみんな頑張っている。日本を除いて。この疎外感はたまらなく寂しいと思いませんか?
 日本人はわずか一人しか、この世界へ人を送り込んでいないのです。これまで何をしていたのでしょうか。
 原さんの言う課題とは。自明の理ですね。

 
武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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