米男子ツアー「ソニーオープン」 武藤一彦のコラム


 米男子ツアー「ソニーオープン」は米ツアー5勝の松山英樹、日本ツアー賞金王の今平周吾ら日本勢7人が出場、14日、ハワイ・ホノルルのワイアラエCC(7030ヤード、パー70)で行われ、米ツアー40歳のベテラン、マット・ク―チャー(米)が22アンダーで優勝した。日本勢は今平が8アンダーの33位。松山は51位、稲森祐貴と星野陸也は44位と66位。小平智、池田勇太、アマでマスターズ出場を決めている金谷拓実は予選落ちした。

 

 賞金王の今平の存在感が光った。第1日、7バーディー、2ボギーの5アンダー65、首位から4打差の4位の好スタート、2日目も67、通算8アンダーで7位は見事だった。決勝ラウンドに入った第3日にアイアン、最終日はドライバーの乱れからスコアは伸びなかったが、大会4日間を通じバーディーを量産、底力のあるところをいかんなく発揮した。さすが日本一、見どころがあった。

 

 大会には昨年に続き2年連続の出場。その直前、マスターズから招待状が届き出場枠をもらった。その時点で出場資格枠外のワールドランキング53位だったが、日本ツアーの激戦を制し賞金王に座った実績などが評価され、招待が決まった。マスターズ委員会はそうした実績を見逃さず、敏感に反応してくれた。高校時代から広く世界に目を向け米留学、帰国後、2部ツアーから這い上がった今平の努力、姿勢はアメリカにも聞こえていたに違いない、うれしかった。
 「まだアメリカでやる力不足を痛感した。ボギーが出てもなにくそとバーディーが取れたのを自信に、これからドライバーショットの精度を高めるなどやっていきたい。芝への対応などまだまだやることが多いが、やってみたい」と先を見据えた表情に期待が持てた。大いに期待したい。

 

 松山は第3ラウンドの9番から6バーディーを積み重ね35位から18位にランクアップ、復活をにおわせた。だが、この日はスタート直後に連続ボギー、以後調子の波に乗り切れなかった。5勝を次々に挙げた一昨年までの4年間、最終日には必ず順位を上げたものだが、この2日間で30センチ、60センチを外すグリーン上には目を覆った。コースをのんでかかったふてぶてしさが姿を消している。今ではコースにのまれている。精神的なものとしか思えない。

 

 世界ゴルフはオフのない米ツアーの独壇場。これから4月のメジャーシーズンが8月まで続くが、そんな切れ目のないロングランのスケジュールはオーバーワークを引き起こしやすい。また、日本ツアーのようにいまだオフにいるツアーの選手には、試合勘を掻き立てるチャンスが少ない。そのため調整不足は悩みのタネとなる。前者は松山に、後者は今平の懸念材料と関係してくる。松山には今平の新鮮なほとばしりを、今平には松山の慎重、かつ周到な準備に立った挑戦心を注ぎたいと思うがどうだろう。

 

 乱戦のハワイを制したク―チャーは40歳。今季は早くも2勝目だ。フロリダ生まれのジョージア育ち。ジョージアテック時代はトップアマ、大学3年のマスターズ21位、全米オープン14位の“雄姿”はいまだ眼窩(がんか)に焼き付いている。この日の優勝で通算9勝目、シーズ2勝を挙げたのは2014年に次いで2度目のことだそうだが、いいゴルフを見せてもらった。スタート直後に3ボギーでアンドリュー・パットナムに逆転を許しながら相手がボギーをたたくと15、16番と連続バーディーで一気に差を広げた。崩れて立ち直るその修正力、あるいは修整力は驚きだった。松山には参考に、今平には目標としてほしい。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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