ゴルフよ五輪開催に声を上げろ 武藤一彦のコラム


 コースレコードに並ぶ9アンダー63、2位に2打差の首位発進した松山英樹だったが、米ツアー2年半ぶりの6勝目はならなかった。ホールアウト後、大会は新型コロナウイルスの感染拡大のため中止。米ツアーもマスターズ前週まで5戦が中止、マスターズも4月5日の開幕を延期した。

 

 優勝賞金今季最高の2500万ドル(約2億8000万円)のプレーヤーズ選手権は米フロリダ・ポンテベドラのTPCソーグラスでの第1日を行い、日没で4人がプレーを終えられず。松山は1イーグルを含む、8バーディー、1ボギーの9アンダー、2位に2打差の首位と好発進したが、喜びもつかの間、大会は夜に入ってキャンセルされた。

 

 当初大会は、第2ラウンドから無観客で行われることが決まっていた。プロバスケット、メジャーリーグなど、他の競技が続々と自粛に向かう中、女子ゴルフも追随などあって、男子も苦渋の選択を迫られた。

 

 ここ2年半優勝できていない松山にとっては絶好のチャンスだった。不運というしかない。今年2月から3月にかけトップ10入り4回と調子が上がっていた。こんどこそ優勝と期待したが肩透かしを食ってがっくりと肩を落としている。見やすさを追求したスタジアムコースというコンセプトで名匠、ピート‣ダイが設計した難コースでの松山の好スタートである。飛ぶ時代のゴルフが様変わりする姿をどんなふうにスコアに反映するか、と見ていたらわが松山の快進撃のコースレコードである。近代ゴルフの変遷を残り3日間、松山のゴルフを舞いながら楽しめる。そんな夢はあっさりと終わってしまった。

 

 感染爆発(パンデミック)は人類のゆゆしき出来事だが、こんな時だからこそ、スポーツ界が踏みとどまって元気を謳歌し引き気味の弱腰態勢を阻止するものだと、思っていたが、人類、世界の反応は静観から諦観へと、常になくマイナス指向のようだ。雪崩を打って大会を中止し、いまオリンピックまでがその存亡を問われている。実体のわからないウイルスだからこそ、鍛えあげた心技体で打ち破る。スポーツマンの強さ、たくましさこそ、こんな非常事態には必要、不可欠。無観客試合のむなしさは大相撲、プロ野球のオープン戦を見る限りもう十分、観客のいないスポーツを、あれでいいと思う人はいないと思うがどうだろう。東京五輪・パラリンピックを無観客開催?そんなことは断じてあってはならない。人類の、とは言わない。しかし、スポーツ関係者の、あるいは日本人の、今の弱腰には「?」,クエッションマークだ。

 

 ゴルフは広い原野で審判がいないまま、老若男女がともに長く楽しんできたスポーツである。観衆だって、隣りの人と2メートル以内の濃厚接触を避けようと思えばできる広さを確保できるから観客も問題も解決だ。そんなゴルフの持つ特質、特異性を,いま、ゴルフ関係者は思い切り主張するべき時である。イベント開催に向け努力する。そんなしたたかさを前面に東京五輪・パラリンピック開催の先頭に立ってほしい。IOC・バッハ会長は「東京五輪・パラリンピック開催の決定は国際健康機構(WHO)の決定に従う」と見解を述べたようだが、五輪はIOCが開催するものではなかったか。ゴルフ関係者はそのような責任転嫁阻止の先頭に立ってほしいものだ。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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