コース総距離は7200ヤードから7900ヤード、ティーとフラッグ位置を決めないと決まらない。第115回全米オープン、ワシントン州チェンバースベイの取り組み 武藤のコラム


 今季のメジャー第2戦「全米オープン選手権」は18日(日本時間19日早朝)からワシントン州チェンバースベイゴルフクラブで開幕する。世界のトップの座を占める松山英樹の戦いっぷりと、あわよくばタイトル獲得!というチャンスに心躍るが、それは始まってからのお楽しみ。コースがねえ、とんでもないことを考えているのだ。

 今年の開催コース、ワシントン州チェンバーベイゴルフクラブはビューゼット湾を望む海岸沿いのリンクスコース。設計はアメリカンゴルフの生みの親、ロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニア。そう、ウオーターハザードと深いラフ、細かい傾斜のある小さなグリーンを散りばめてゴルフを高弾道で攻める空中戦に変えた男だ。そのジョーンズが07年、満を持して作り上げたのがチェンバースベイGC。こんな具合だ。

 ピンを狙うのがゴルフだが、グリーンに打つのはだめ、はるか右の丘に向かって打つ。すると右の傾斜に落ちたボールは半円を描き左へカーブ、さらに最後ピンを目指して右カーブでピンそばだ。ドッグレッグホールは、ショートカットすると丘の傾斜を駆け下りた球が、ゴルファーの視野から消えるとまたあらわれて山裾を進むとまた消えて、とまるでマジックショー。ギャラリーは“どうなっているの?とみているとピンそばにぴたり。そんなホールの連続なのだ。

 コースでは2010年、「全米アマ選手権」を開いた。既述した”半円を描く球“や”出たり消えたりの幽霊ボール“は、その時の映像を見ての驚きである。いや、驚きますよ。何しろセントアンドリュースを山の中に持って行ってアンジュレーションをつけたと想像してごらんなさい。ホールによっては30メートルの高低差があるから、確かにピンの位置、ティーの場所次第で全く別のコースになる。

 PGAツアーの公式ガイドには、7585ヤード、パー72。一応、そう記されている。が、大会関係者はさらりと言うのだ。「ヤーデージはあってないようなもの。ティーを一番後ろに下げ、グリーンの一番奥に旗竿を切れば600ヤードのパー5。だが、前のティーでピン手前なら短いパー4になる。今度の大会ではティーとピン位置を天気や風によって大胆に変える。従ってヤーデージは7200ヤードから7900ヤードの間を4日間、目まぐるしく変わることになるだろう」とはトーナメント関係者だ。

 ということは“日替わりヤーデージ?”確かにゴルフコースの長さは陸上競技の規定とは程遠い。基本的な基準を決めてはあるが、4日間、ピンやティーを気候条件やスコアを見ながら変えている。しかし、今回のように基準はない、と言われると「いよいよ日替わりヤーデージの時代来るか」と色めき立ちたくなろうというものだ。ま、どうなるかわからないが、それも時代と注目しながら待つとする。

 大会には全米地区予選を勝ち抜いた石川遼、日本でのアジア予選から藤田寛之、川村昌弘、薗田峻輔も出場する。今度の大会で勝つと、史上6人目のキャリアグランドスラム、即ちマスターズ、全英オープン、全米プロに加え全米オープンの4メジャー制覇する、生涯グランドスラム達成となるフィル・ミケルソンは「5月に下調べのラウンドをしたが、アイアンショットがスコアのポイントとなる」といっている。松山も5月にラウンド済みとか。みなさん、お大事に~!

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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