強気の松山、新時代に入った全米オープン18位、よく我慢した 武藤のコラム


 メジャー第2戦「全米オープン選手権」は米西海岸・ワシントン州のチェンバースベイゴルフコースで行われマスターズチャンピオンのジョーダン・スピースが優勝した。21歳、スピースは最終ホールをバーディーで抜け出し今季マスターズに次いでメジャー連勝、2週後の全英オープン、8月の全米プロへ向けたプロ初の年間グランドスラムに夢をつないだ。

 シアトルから1時間、ワシントン州で初めて開かれた全米オープン。正確な機械のようなショットが持ち味の選手に有利な大会だが、今回は誰もが苦しんだ。勝てば生涯グランドスラムのミケルソンは3日目77で圏外へ。タイガーは予選すら通れず。

 優勝争いは、18番でイーグルパットを外すもバーディーを決めたスピースが5アンダーで首位に立ち最終組を待った。最終組のジョンソンは18番で4メートル弱のイーグルパット、その直後1メートル弱のバーディーパットをミス。優勝はスピースに転がり込んだが「あの短いパットが入らないなんて、月曜日の18ホールのプレーオフへ気を引き締めているときで信じられなかった」と驚いた。勢いのある者の強さを見せての優勝だった。

 砕石場の跡地に作ったチェンバースベイコースが主役だった。2007年開場のあたらしいゴルフ場。わずか8年で大舞台へ。全米オープン史上初の思い切った登用に面白さと意外性で応えた。

 設計のロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニアはスコットランドと見まがうコースを再現した。だが、そんな甘いものではなかった。高低差30メートルの傾斜地にボールはローラーコースターと化しコースを駆け抜けラフ、バンカーへ入った。グリーンでは3メートルのパットがカップをかすめて外れ、だれもが「惜しい」とつぶやいた後、信じられないシーンが現出した。ボールはゆっくりと転がると止まる気配もみせず、なんと5メートルも先のバンカーに当然のように入った。まさかバンカーをカップと間違えたのではないかと思うほど“当然のように”だ。ギャラリーはそんなシーンを愕然と眺め声もなかった。

 松山は強気で攻めた。パープレー70の26位スタート、2日目1オーバー21位、3日目3オーバーとスコアを落としたが、首位と7打差19位と順位を上げた。「パットしたボールが止まるまで安心できなかった。傾斜を外れると深いフェスキューのラフだし、10ヤードのアプローチはカップのはるか先の傾斜にぶつけて戻して寄せた。初体験で疲れた」最終日もついに60台が出ず19位。毎日ダブルボギーがあり4日間で4つはもったいなかった。

 スピースとは昨年のダンロップフェニックス(宮崎)でデッドヒート、ホームの利もあって余裕の優勝を飾ったが、マスターズ、そして今回と敗れた。今季の目標はメジャー優勝。それが2歳下の後輩に先を越されて唇をかんでコースを後にした。まだシーズン半ば、調子はいいし悔しさをバネに頑張ってくれるだろう。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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