今年の日本女子オープン(10月1~4日、片山津・白山コース)は3人プレーオフの激戦が4ホールにも及び面白かった。優勝は韓国のチョン・インジ(田仁智)が、最後2人の争いとなったサドンデス・プレーオフを制した。もう一人の韓国人プロ、イ・ミヒャン(李美香)との3人による争いは、プレーオフの女子プロオープンの最多出場記録。最後は菊地と二人の決戦になったが、菊地はショットを乱すダブルボギー、相手のインジはボギーという展開で決着、手に汗握る好ゲームだった。
菊地は大魚を逸した。最終ホールまで3アンダー、1打リードして首位で来ていながらティーショットを右ラフ、3オンのあと、4メートルのパーパットをはずすボギーで優勝を逃した。
韓国の二人は菊地より早いスタート、次々と土壇場でバーディーを積み重ねて2アンダーだっただけに、菊地の最終ホールは残念だった。入っていればあっさり優勝。その後のプレーオフなどしなくてよかったのに、と日本のファンを歯噛みさせた。
18番パー4をくりかえしたプレーオフは3ホール目でイ・ミキョンが脱落。4ホール目、菊地がバンカーを渡り歩くなど4オン2パット。インジは3パットしたが、ボギーで決着した。
北海道・千歳出身の天才少女・菊地
菊地は27歳。小柄だが柔軟でしっかりした足腰を持ったたたき上げだ。北海道・千歳出身。ティーチングプロの父の元、姉と二人プロを目指した。3キロの鉄棒で作ったアイアンの素振りで筋力を鍛えた。そのクラブでショットもした。こだわりのない、のほほんとした性格は勝負所では一遍、気合十分の勝負師に変わった。プロゴルフファーとしての資質を持ったプロゴルファーだ。
宮里藍、上原彩子が全盛のアマ時代。中学生でアマ最高峰の日本アマ選手権でベスト4に入った。天才ばかりのいた当時、あまり話題にならなかったが、すごい出来事だった。
高校は藍らの出た宮城・東北高。乞われて進学した。プロとなって順調に成長。今年4月、熊本の「KKTバンテリンレディス」で、プロ8年目で初優勝を飾った。
順調な歩み、と言いたいところだが、もはやそんなことを言っていては時代遅れなのだろう。菊地にとっては今回のチャンスは逃してはいけない大魚だった。という気がしてならない。
優勝したインジは20歳。今年のメジャー「ワールドレディス」に日本初参戦で初優勝した逸材だ。高麗大3年。2012年にプロ転向した学生プロは韓国ツアー5勝。身長1メートル75。おっとりして強いところから「ダンボ」の愛称で親しまれる人気者だ。
「大学生活を全うしたい」と”制限付き“の戦いながらこの好成績である。しかし、この歩みが今や世界の流れ。男女とも20代の活躍が著しい。菊地の歩みがまどろっこしく思えるくらいの成長ぶりだ。
世界はジュニア出身の若手の急成長。その流れの本流はそうした流れを作った“お姉さんたち”だ。26~27歳、ここにも韓国勢の強さが際立つのである。目下、賞金女王に突っ走るイ・ボミ(26)、申ジエ(27)アン・ソンジュ(27)そして台湾のテレサ・ルー(27)である。
しかし、この現実を「アジアの台頭」とひとくくりにするには異論がある。そこには日本の入り込む余地がないからである。
今回の日本女子オープン、インジの優勝で日本のメジャーは5戦連続して外国勢が占めた。昨年の日本オープンから始まった日本のメジャー競技は日本の5連敗である。
14年の日本女子オープン優勝のテレサ・ルーはその年の最終戦のメジャー「リコーカップ」に勝ち、15年は「日本プロ選手権」も優勝。インジのワールドレディスと今回を合わせると日本勢は自国のメジャーを5連敗である。日本勢も頑張っているからこその盛り上がり、という意見もあろう。だが、若手の成長の遅れとトップの勝負弱さ。日本女子ゴルフ界の抱える課題は全体のレベルダウンを示している。はっきりと!