伝統のメジャー、第102回の「全米プロ選手権」は地元カリフォルニア生まれの日系米人、23歳、コリン・モリカワのメジャー史上まれにみる大波乱の独り舞台となった。圧巻はパー4の16番295ヤードのパー4だ。ワンオンを狙ったティーショットはグリーンに舞い降りピン2メートル。イーグルパットを落ち着いてカップど真ん中から決め13アンダー、2位に2打差は難コースでは安全圏、堂々のメジャー制覇となった。
第3ラウンド、338ヤードの16番はこの日、「前日より40ヤード短くピンロケーションはグリーン右奥、ティーからはストレートに狙えた」と自信のショット。「風は左前方からきていたが、会心のショット。ウエッジショットだってああはうまく打てなかったと思う」と胸を張った。
1916年創設、米ツアー最古のメジャー全米プロ選手権。最終日は3連覇を目指す30歳のケプカと36歳のダスティンジョンソンの“30代の2強”に加え43歳ポール・ケーシーが100年ぶりとなるイングランド人優勝の夢を乗せてベテラン優位の展開。1922年創立、時の大統領 ハーディングの名を冠した全米屈指のパブリックコースは樹齢100年を超える大木が空を覆い空中にペナルティーがあるといわれた難コースだけに、若者の付け入るスキはない、そんなムードが立ち込めていた。しかし、この日、モリカワは3、4番をバーディースタート、10番パー5も“オーケーバーディー”。さらに14番。グリーン手前、15ヤードのピッチエンドランのアプローチを直接放り込むバーディーで11アンダー、スタート時の2打差4位から一気に首位に並んだ。このホール「キャディーのジェージェーが入れちまえ、というから入れたんだ」乗りに乗った瞬間だった。
ロスの名門、カリフォルニア大バークレー校の出身。世界アマランキング首位のエリートは、昨年プロ入りし6戦目で初優勝、コロナ禍で滞りがちの日程の中、今年7月にはバラクーダ選手権で2勝目。世界ランク17位と上り調子。とはいえ、175センチ、74キロ、笑顔の静かな日系の新人。メジャータイトルを直接結びつけるのはちょっと早すぎる?というのが大方の見方だろう。だが、この試合でプロ通算ちょうど30戦目の節目、地元開催のメジャー。期するところはあったという。「メジャータイトルはまだ早い?でも23歳でニクラウスもタイガーもマキロイもやっているのでしょ?」“それなら俺にできないことはない”、けろりとしていた。
日本期待の松山は4アンダー22位。この日、4バーディー、2ボギー、1ダブルボギーと順位を下げたが、最終日のゴルフに光明。広いスタンスから球に覆いかぶさるようにして打つショットは時に、フィニッシュで態勢を崩したが、いつになく気迫があった。ミスをした後でにやりと笑う表情が松山らしくていい。完全を期してうまくいかなかったのなら初心に帰って切り替える。28歳の若々しさを、モリカワみたいに出してみるのもいいかもしれない、と思うがどうだろう。