日本女子オープン 武藤一彦のコラム


 女子ゴルフ日本一を決める伝統の日本女子オープンは4日、栃木県・烏山城CC(6550ヤード、パー71)の最終日、首位で出た勝みなみ(明治安田生命、23歳)が6バーディー、1ボギーの66のベストスコア、通算14アンダーで、2位の19歳・西郷真央、ツアー15勝のベテラン上田桃子に6打の大差をつけて圧勝した。これまでツアー5勝を上げた勝だが、メジャー優勝は初めて。待望のホープがまた一人増えた。

 

 「プロ入りしてメジャーに勝ちたいとやってきたが、今年は調子が良く日本オープンでチャンスが訪れ粘れた。最終日は6バーディーが取れ、4日間、60台で回れた。難コースを攻略でき本当にうれしい」。これまで日本ジュニア、日本女子アマに優勝した天才少女は、日本女子オープンは2011年、11位とその後、順調とは言えないキャリアに甘んじながらじっくりと蓄えたパワーを思う存分、発揮して会心のビッグタイトルを手にした。

 

 2人一組で回る緊張の最終組。勝はドローボール、19歳の西郷はフェードボールと持ち球は正反対の対決で見応えがあった。だが、勝は1,2番とティーショットを曲げいずれも6メートルのパーパットを入れるなど、先行きに不安が漂った。展開も悪く3番、6メートルのバーディーパットを決めたが、西郷が5メートルを入れ返し5番7メートルを入れたが、西郷は2メートル半を難なく入れ、誰の目には苦戦と映った。
 そんな流れが変わったのはトリッキーな7番だ。打ち上げの98ヤード、勝の第2打、58度のウエッジショットは80センチ、さらに10番、1メートルを入れるバーディーでその差は3打。浮足立った12番、西郷が3打目をオーバー、たまらずボギーを叩きその差は4打と決定的な差がついた。圧倒的なショートゲームのうまさと今季2位の270ヤードを越えるドライバーショットが支えだった。

 

 勝についてはこんな話がある。往年の名手、日本ゴルフ界のレジェンド、ビッグスギこと杉本英世プロがジュニア時代の勝に手ほどきしたとき、勝のショットに衝撃を受けている。「球の芯を打ち抜くセンス、技量を持った天才だ。成長が楽しみな子だね」
 157センチの小兵だが、キャリーで280ヤード、時に290を飛ばすパワーヒッター。この時代、ゴルフ界、中でも女子プロゴルフ界は、天才は珍しくもない。が、技があり、勝負のかかったパット上手とくれば世界が近くなるというものだ。畑岡、渋野、そして笹生に次ぐ第4の天才の開花と受け止めて、今後の成長に期待したい。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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