米女子ツアーナウ 武藤一彦のコラム


 米女子ツアーの今季第4戦「LPGAドライブオン選手権」は27日、アリゾナ州ゴールドキャニオンのスーパースティション・マウンテンGC(6526ヤード、パー72)で行われ、日本の古江彩佳は首位から1打差の3位、渋野日向子は4打差の7位と驚異的な健闘ぶりが光った。優勝はフランスのセリーヌ・ブティエがプレーオフの1ホール目、ジョージア・ホール(英)を下しツアー3勝目を挙げた。

 

 トップと3打差、19位からスタートした古江は、アウトを3バーディー、インに入り10番をバーディーとした時点で通算16アンダー、首位に並んだ。勢いは加速し、14番と上がりの17,18番もバーディーとし、19アンダー、堂々のトーナメントリーダーとなった。後続組のプレーを待っていたが、ジョージア・ホールが20アンダーでフィニッシュしたため、米本土での初優勝とはならなかったが、目の肥えた米ギャラリーをうならせ喜ばせた。

 

 小柄ながら正確なショットと絶妙のパッティングはLPGAツアーでも話題。この日も8番でグリーンエッジから12メートル、10番は6メートルを入れて波に乗った。14番、全選手がワンオン狙いの283ヤードのワンオンホールをひとり、90ヤードに刻み、2メートルを入れるバーディーに収めた、インサイドワークが冴える。飛ばないゴルフを逆手に生かし米ツアーにいま、「フルエ・スタイル」が定着しつつある。また3位かなどといわないでほしい。米ツアー本格参戦2年目の初戦、シンガポールでの「HSBC女子世選手権」、3位。その翌週の日本ツアー、「明治安田生命レディス」も3位、そして今週と3戦続いて3位である。この日、ホールアウト後言ってのけた。「飛ばないから、飛ばさないでもやれるゴルフを追及しています。それができることが分かってきました」とにっこり。的確なショットがパワーゴルフ全盛の中で光りを放っている。
 渋野には全英女子オープン優勝時の切れの良いショットが戻ったといって良いうれしい兆しが見えた。ホールアウト後、パットの良さを強調したが、この日、切れのいいアイアンショットを決めて6バーディー、何よりもショットが安定、ドライバー、フェアウエーショットのフェードボールは高さといい、ここ数年なかった冴えがあった。

 

 ドライバーもアイアンもフェードボールに徹していた。特にアイアンショットは固い乾燥したアリゾナを克服して見事だった。アリゾナの硬いグリーン、乾燥した空気は肌に合っていたのだ。全英オープン優勝時をほうふつさせる、思い切りのいいショットが随所に出て“渋野復活”を感じさせてくれた。
 「なんか知らないけど調子がいいんです」ホールアウト後、さらりといった。「風が難くコースが堅く風が強いのは好きじゃない。でも久しぶりにいいゴルフができているから次週も頑張ります」といった。次週は米西海岸カリフォルニア州のパロスベルデスGCの「DIOインプラントLAオープン」である。タフなコースだがきっと勝つだろう。注目したい。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

最新のカテゴリー記事