プレジデンツカップ第2日、米チームのミケルソンのプレーに疑義 -ワンボール・プレー・ルール違反に波紋 武藤のコラム


 韓国・仁川のジャックニクラウスコースで開催された「プレジデンツカップ」の2日目、米国チームのフィル-ミケルソンがゴルフ規則の「ワンボール条件」に触れるルール違反を起こし、物議をかもしている。

 相棒のザック・ジョンソンと組んだミケルソンはジェイソン・デイ、アダム・スコットの豪州チームと対戦。4人が別々のボールを打ちそれぞれのベストスコアで争うダブルスのフォアボール戦に臨んだ。

 その7番パー5。ミケルソンはティショットをそれまで使っていたボールと違う、別のボールで打った。メーカーは同じだが、コンプレッション、いわゆるボールの打感の堅い球だ。「ツーオンを狙う作戦だった」と認識してのショットはフェアウエーをとらえた。しかし、フェアウエーを歩いているとき“?”と疑問を抱く。「あれ?この試合はワンボール・ルールが適用されていたのではなかったか」

 懸念は当たった。チームキャプテンを通じ競技委員の裁定を仰ぐとゴルフ規則の付属1―C「ワンボールの条件」を適用した今大会のルール違反。「正規のラウンド中、プレーヤーが使用する球は最新の公認球に記載されている同じブランド・同じ球でなければならない」に違反した。裁定は「このルールの違反により2ダウン」となった。

 なんでこんなことになったか。試合中、同一ブランド、同モデル使用はすでに常識化した規則である。同じメーカーの同じ商品の球をラウンド中に使わなければならないことは、誰でも知っていることだ。だが、ルールは”例外”を認めている。

 PGA・オブ・アメリカ主催のライダーカップと全米プロ選手権である。前者は米国と欧州連合チームの対抗戦で今回と同じ形式のマッチプレーによる対抗戦で、使用球を限定せず同一メーカーであれば違うモデルなら使用できる。全米プロも同じ理由でオーケーだ。

 使用球を限定するとメーカーとボールの使用契約を結ぶ選手の権利侵害に及ぶ。例えばダブルスでAメーカーとBメーカーの選手がチームを組むと使用球を単一のものに限定する不公平が生まれる。過去にもこの種の使用球を巡ってはいつも必ずトラブルとなってきた。そのためゴルフ規則も付属規則として競技の運営管理についての項を設け、球の使用については「ワンボール条件」の規定を採用しなくても構わない、ということを認めている。全米プロについてもこの条件を採用せず、同一メーカーであれば自由に使える。メーカーの商品の使用を競技が侵害しない、という姿勢なのだ。

 プレジデンツカップは使用球を制限している。それをミケルソンが「勘違いしていた」のが今回の事件だ。「ライダーカップでできたことだったのでつい。パー5なので2オンを狙おうと硬い球を打った」ミケルソンの記憶違いが生んだ、前代未聞の出来事。

 ミケルソンは間違いに気づきボールをピックアップし次のホールに備えた。そのペナルティーに対して2ダウンが付いた。マッチは引き分けとなった。米チームはこの日1勝1分け3敗で通算成績は米の5・5対世界4・5の激戦へもつれ込んだ。

 世界最高峰を決める大きな大会で起こったありえないミス。米チームは事前にルールの徹底をしていなかったことが明らかになった。事件は最終日、いや今後に尾を引くだろう。

 いま、ミケルソンには疑義が持ち上がっている。ほかのホールでも球を代えて打ったのではないか。パー5は3番にもありそこで硬い球を使ったのではないか。特にこうした声は巻き返しを狙う世界選抜チームに“そのあたりをはっきりしてほしい”という声が上がっているという。1994年から2年に1回開催され10戦、米8勝1分け1敗。わずか1勝の世界選抜は韓国開催という有利なホーム開催を何がなんでも勝ちたいところだ。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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