身を捨てて浮かぶ瀬もあれ、片山晋呉の心境だ・・・ 韓国人プレーヤーの強さに今更ながら、弱体の日本ツアーを憂う 武藤のコラム


 韓国人プレーヤーの強さに改めて驚かされる。日本女子ツアー「NOBUTAマスターズ」(兵庫・マスターズGC)はベテラン36歳の李知姫が逃げ切り優勝し通算19勝を挙げた。勝てば2億円越えの賞金女王を引き寄せたイ・ボミは2位のアン・ソンジュに次いで3位と韓国は1‐2‐3フィニッシュ。果てしなく続くその強さには驚きを通り越して呆れるばかりだ。イ・ボミは、賞金額を1億8928万円余とすると、日本勢の女王の座は亡くなった。最終戦まで残すところ5戦、トップランクの上田桃子が全勝しても追いつけないのだ。一時の不動裕理が圧倒的だった強さは、今は昔、いまはすべての部分で韓国が圧倒している。

 来年のブラジル・リオ五輪、韓国女子のメダル獲得はかなりの確率で堅いだろう。オリンピック出場者を決める世界ランキングは、1位朴仁紀、5位柳、7位から9位までを韓国勢が占める。実にトップ10に韓国人プレーヤーが半数の5人。

 オリンピックは男女各60人が出場72ホールで争われる。2016年7月、五輪直前の世界ランキング15位までの15人と16位以下からは1か国2人を上限として出場資格を与えられる。

 現時点で選ぶとしたら、トップ10に5人の韓国は4人出場枠がある。アメリカは15位までに4人いるからこちらも4人確保だ。しかし、日本はというと宮里美香(39位)、大山志保(42位)の2人だ。あと1年で若手が頑張って4人枠を手にすることが当面の目標だが、どうだろう。

 TPO、時と場所、そして機会を得て韓国のゴルフは強くなった。自国のツアーは弱体ながら、戦いの場を外に求め、世界に羽ばたいた。アニカ・ソレンスタムを送り出したスウエーデンにならい企業が選手育成に資金を提供、国を挙げてバックアップした。家族ともども米、豪州、ニュージーランドに移住、環境を整え、腕を磨いた。

 米ツアー今季5勝、賞金トップのリディア・コはニュージーランド国籍だが、韓国から移住した。自国にツアーを持たないスウェーデンと並ぶ、成功例だ。

 日本にとっては男子も厳しい状況だ。誇れるのは世界ランク15位と孤軍奮闘している松山ぐらい。今のままでは五輪の4人枠は厳しい。現時点、86位の池田勇太、89位の岩田寛、そして159位の石川遼はよほど頑張らないと日本代表になれない。

 「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」そんな古いことわざが脳裏をかすめる。身を投げ出す覚悟があってこそ、窮地を脱して物事を成就することができる。日本ツアーは男子も含めこれからは死んだ気で頑張る時だ。

 

 

 そんな矢先の伝統の「ブリヂストン・オープン」(千葉・袖ヶ浦CC)だった。32歳、松村道央が4打差7位から逆転優勝した。3日目を終わって3位の片山晋呉が大いに興奮して、日大の後輩のトーナメントリーダーの堀川未来夢(みくむ、と読む)に“お前を男にしてやる”と最終組で対決した。20歳も年下の22歳に“発奮”を促したのだが、なんと勝ったのは10歳下のこれまた日大出の松村という結末。ともあれ、日本ツアーの賞金王を韓国の金庚泰にさらわれる寸前、そのピンチは松村のおかげでとりあえず阻止できたのは、めでたかった。

 「身を捨てて浮かぶ瀬」は片山の心境をおもんばかってのこじつけのつもり。いや、自らスポンサーを連れてきて優勝賞金7000万円の大会(「ネスレ日本マッチプレー選手権レクサス杯」)を開く “異端児”の行為をクーデターと決めつけたことがあったのを思い出したのだ。片山の破天荒の見える行為こそ、立ち直りを目指す日本の何よりの栄養剤。強くなるためにみんなで、なんでもやってみましょうよ、の心意気に賛同したわけです。頑張れニッポン。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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