度肝抜くタイの新星!米女子ツアーが大変なことになっている。 賞金ランキング・トップテンの平均年齢は22歳だ 武藤のコラム


 米女子ツアーの「LPGAボルビック・チャンピオンシップ」は30日、ミシガン州のボルビックポイントCCで最終日を行い、タイのアリヤ・ジュタヌガーンが2位に5打差の圧勝で今季3勝目をあげた。
 デビューして2年目の今季は「横浜タイヤクラシック」で米ツアー初優勝。勢いに乗り、続くキングスミル・チャンピオンシップを連覇。3戦連続優勝のかかった今週は、4日間15アンダー、2位に5打差の圧勝で3試合連続優勝の偉業となった。初優勝から3戦連続優勝は米女子ツアー史上初めて。このあとジュタヌガーンには4戦連続優勝がかかるが、次週の「ショップライト」か、その翌週の「全米女子プロ選手権」のいずれかでさらなる記録に挑むことになる。日本勢は上原彩子39位。横峯さくら43位だった。

 米ツアー連続優勝記録は08年のロレーナ・オチョア(メキシコ)の4連勝がある。至近では13年、インビー朴(韓国)の3連続だが、ジュタヌガーンの記録が際立つのは初優勝からの3戦連続優勝だ。“ルーキーの開眼物語”ほど明るくて楽しいものはない。

 昨年がルーキーイヤーの20歳。だが、29戦に出場2位が1回、新人王争いで6位と目立たなかった。今季も開幕戦は予選落ちなど低迷していた。それが4月のメジャー「ANAインターナショナル」で4位に食い込んだあたりから目が出始めた。

 異色の20歳だ。176センチと大柄、体重は非公開なので伏せるが、バランスのいい身体、よく締まった細い足首は運動能力の高さの証明だ。パワー満開。さっと挙げてパシッと振り切るスリークォーター気味のショットは切れ味抜群だ。

 今大会、ドライバーを封印した。ミシガン湖畔のリゾートコースで行われた4日間72ホール。強風と堅いコースにボールがほんろうされ、苦戦する選手の多い中、ティーショットはドライビングアイアンを使いフェアウエーキープに徹した。それでも飛距離は280ヤード。初日65の2番手から68、67、73と3日目に4ボギーが出たが、パットのうまさも際立った。
 「ドライバーで飛ばしても曲げては何にもなりません。風もあったし低い球でフェアウエーキープ。キャディのアドバイスもあってやってみた。とてもいいゴルフだったわ」性格はあくまでおっとり。そう、かつて米ツアーを沸かせた岡本綾子のライバル、イングランド出身のローラ・デービース。よほどのことがない限りドライバーを手にしなかった、あの特異な存在感。大物感いっぱいだ。

 姉のマリヤと参戦する姉妹プレーヤー。タイはタイガーウッズの母親の母国。常夏の、ゴルフにもってこいの環境はタイガーの影響で米資本が参入、いまアジアで最もゴルフが盛んな国。日本のジュニア選手たちも冬の合宿地としてその好環境を利用している。姉妹も父親の影響で3歳ころにはクラブを握ったという。柔軟な体と微笑みの国と言われるタイである。穏やかな精神面の充実はセルフコントロールのスポーツと言われるゴルフにもってこいなのだろう。

 そして、ジュタヌガーンの優勝はこんな結論を引き出してくる。ゴルフはジュニアのスポーツへまっしぐら、だ。
 こんなデータがある。米女子ツアー賞金ランキングのトップ10の平均年齢は22歳である。1位のリディア・コ(豪州)19歳。ジェニー・カーン、20歳。8位にいるジェリーナ・ピラー(米)の31歳が最年長で、あとは10代から22歳以下ばかりである。ドライバーを使わないなんて序の口。ゴルフも様変わりするわけである。

 
武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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