リビエラの呪いだ、予選落ちした松山英樹の真価が問われる戦いが始まった 武藤一彦のコラム


 米カリフォルニア州ロサンゼルスのリビエラCCで行われた男子ツアーの「ジェネシスオープン」はダスティン・ジョンソン(米)が通算17アンダー、2位に5打差の大差で優勝を飾った。大会は濃霧、強風の悪天候で進行が遅れ、最終日は、第3、最終ラウンドを行った。2位はデンマークの新人、トーマス・ピータースとスコット・ブラウン(米国)、4位にはリオ五輪の金メダリスト、ジャスティン・ローズ(英国)が入った。優勝したジョンソンはこの優勝でワールドランキングのトップに初めて立ちアメリカンヒーローへの軌道に乗った。

 

 日本の松山英樹と石川遼は予選落ちで決勝ラウンドに進出できなかった。今季2勝、通算4勝の松山には期待がかかったが、通算6オーバーで、石川ともども決勝ラウンド進出はならなかった。

 

 松山は3日間かかった予選ラウンドの第1ラウンドを69の19位、第2ラウンドは9つのボギーをたたく80、通算6オーバーで今季初、昨年8月以来の予選落ち。“大たたき”は昨年のキャデラック選手権の81に次ぐプロ入り2番目のワーストスコアとなった。

 

 アイアンショットが乱れ、ショートパットを逃した。スピンコントロールがかみ合わずグリーンを外した後のパットが全くと言っていいほど入らなかった。「悪い要因が何なのか早く見極めないといけない」と焦りを口にした。今後については「パットはどうにかなると思うが、ショットは今のところどうなるかわからない。何とも言えない」と深刻だ。

 

 懸念が的中した。いやな予感が当たった。ロサンゼルスの呪い、リビエラの底意地の悪さだ。

 

 旧大会名がロサンゼルスオープン。91年の伝統を誇る米ツアー屈指の大会は特別な意味を持つ。この大会をもって米ツアーの本格開幕を告げる大会は、日本選手にとっては鬼門だ。かつて伊澤利光のプレーオフ負けも含め、日本にとっていい思いはない。

 

 ロス郊外の太平洋岸、パシフィックパリセーズ(太平洋の柵)の地名にあるように沿岸は丘陵地。名門、リビエラCCはタフなコースとして、西海岸の最終戦として特別な意味を持つ。ご存知。米ツアーは太陽を追って、温暖なハワイから西海岸を経て南へ開催地を移す。ツアーは来週からフロリダへ。この急転換は選手にとって大きな問題となる。

 

 特に日本選手にとってはなじみのある西海岸から、一気に渡るフロリダ、そして北の北西部への転戦は全く未知の世界だ。芝の違い、人、水…全く違ってくる。

 

 ニクラウスはロサンゼルスが終わると晴れやかに言ったものだ。「さあいよいよフロリダシリーズだ」─北東部オハイオ州生まれ。マスターズ、全米オープンのメジャーはすべて伝統的にこの地域開催。フロリダは寒い北東部の避寒地としてニクラウスには開幕戦にふさわしい。この思いは他のプレーヤーにもある。フロリダからが戦いの始まりだ、と。

 

 世界は広くなった。アジアも含め世界は一つ。芝、環境の変化は以前ほどなくなった。だが、松山は、そして石川は大丈夫か? この先の厳しい道を思いやるとき、心配はぬぐえない。松山のメジャー優勝を目指した戦いが続く。まずマスターズ。そして6月の全米オープンへ。松山の揺らいだ自信は取り戻せるのか。石川のカムバックとともに、グッドラックを祈る日々が始まった。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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