47歳ミケルソンが歴史を作り始めた 史上6人目の生涯グランドスラムへ足音高く歩き出した 武藤一彦のコラム


 PGAツアー第17戦の「WGCメキシコ選手権」は47歳のフィル・ミケルソン(米)がプレーオフでジャスティン・トーマスを下し、2013年の全英オープン以来、4年半ぶり、通算43勝目の優勝を飾った。

 

 標高2200メートルの高地、メキシコ市のクラブ・デ・ゴルフ・チャペルテペック(パー71)で行われた最終日、優勝争いは47歳ミケルソンとインドの21歳の新星、シュバンカル・シャルマの新旧対決でわいた。ミケルソンの優勝なら最高齢、シャルマなら最年少、どちらが勝ってもツアー優勝者の年齢記録を上回る、歴史のかかった好試合だった。

 

 ミケルソンはアウトでスコアを伸ばし首位に立つと、その勢いにシャルマがじりじり後退、代わって飛び出したのが、ここのところ好調のトーマス。10アンダーの6位から一気に上昇、最終18番ではセカンドショットを直接放り込むイーグルの離れ業を見せ、通算16アンダーでホールアウト、最終組を待った。

 

 ミケルソンは中盤、ショットを乱し前週の「ホンダクラシック」に次ぐ2週連続優勝のトーマスに勝ち運が傾いた展開。だが、ミケルソンは15,16番をバーディーとしプレーオフへ。その1ホール目、24歳のトーマスは気押されたか、アプローチを寄せきれずボギーをたたきミケルソンに優勝が転がり込んだ。

 

 アリゾナ州立大時代2年、19歳で「ノーザン・トラスト・オープン」をアマ優勝したアメリカンヒーローが47歳7カ月になって打ち立てた最高齢優勝記録にコースはわいた。ミケルソンは「ここ数年は年齢的にも体力的にもタフなシーズンを強いられたが、そうした中でのチャレンジを楽しんできた。今日もトーマスら若手と競り合って勝てた。ベテランになるとこうした結果がはげみになるんだ」と素直に喜んだ。
 首位に立ったこの日の中盤、ショットをブッシュに曲げながら驚異的なリカバリーショットを連発、持ち味の攻めのゴルフを貫いての久々の優勝は絶賛に値する。マスターズ3勝、全米プロ、全英オープン各1勝。6月の全米オープンを勝てば4メジャーのタイトルを一手にする史上6人目の生涯グランドスラムを達成する。しかし大会前には「マスターズ前に1勝を挙げマスターズのタイトルを取る」と明言していた。今季、好調の手ごたえ十分感じ、まずはあと1か月後のマスターズ。6月の全米オープンはそれからゆっくり考える-そんな余裕を感じさせた。マスターズを勝てばニクラウスの最高齢優勝記録45歳を上回る。記録を一つ一つ作っていくことをベテランは楽しみはじめた。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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