勝ったマキロイ、松山タイガーもう少し 武藤一彦のコラム


 マキロイがパーマーのなくなった日以来のカムバック優勝を果たした。松山、そしてタイガーの復活は持ち越されたー。米PGAツアー19戦の「アーノルドパーマー招待」は18日、フロリダ・ベイヒルクラブ(パー72)で最終ラウンドを行い、ロリー・マキロイ(英)が64、通算18アンダーで優勝した。注目のタイガー・ウッズは5位、故障で1か月半ぶりカムバックの松山英樹は1アンダーの49位と課題が残った。

 

 カムバックすることの難しさを感じさせた大会となった。左手親指付け根を故障で1か月半ぶりツアー復帰の松山は追い上げを期待されたが、2バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの74、通算1アンダーの49位。最終日にめっぽう強い松山だが、2バーディーを先行しがら大詰めの16番でティーショットをOBするなどいいところがなかった。
 「左親指の痛みは出なかった。復帰戦を4日間プレーできたことを「良し」としたい。マスターズまであと1戦だが、現状を踏まえ万全の態勢で臨みたい」表情は明るかった。しかし、ショットは左へのひっかけが目立った。驚異的な練習の多さと内容で知られるが、左親指付け根という、最も比重のかかる部分の故障は、練習量を減らすしか対処のしようがなく不安材料だ。次週は、マッチプレー競技でストロークプレーの勘が鈍っているなどもマイナス材料だ。「相手のいるマッチプレーだが、ストロークプレーの感覚で試合に臨むつもり」というあたりに苦しい台所がのぞいて、気がかりだ。

 

 タイガーは先週の2位に次いで5位と連続トップ5入り。この日は一時、首位に2打差まで迫ったが、16番パー5、勝負に出たティーショットを強振してOB、自ら追い上げの芽をつんだ。5年間優勝なし、ひざ、腰の故障からのカムバック途上にある42歳、通算80勝目は決して簡単ではない。「結局ショットが悪いということだ。戦う体勢は整ったが、優勝争いの中で納得のいくプレーができるよう、これからも努力したい」プレー中は笑顔が随所に除いたが、ホールアウト後、目は笑ってはいなかった。松山同様、ようやく戦う場に戻ったばかり。当面、復活を2週後のマスターズに置いているが、どう出るのだろうか。

 

 マキロイは16年9月25日のシーズン最終戦の「ツアーチャンピオンシップ」以来、久々の米ツアー優勝だった。その試合の最終日はパーマーが死去した日と聞き「偉大な先人の大会で勝てて本当にうれしい」と涙ぐんだ。PGAツアー14勝。ここ5戦で最高位20位、予選落ち2回。やはりけがが原因で苦しんでいたが、ようやくどん底を脱出した。「けがも乗り越えることができた。自分の歴史をここで作ることができた」とハレバレとした笑顔だった。
 この優勝でマスターズの主役に躍り出た。メジャータイトルはマスターズを除きすべて手中にある。勝てば生涯グランドスラムの偉業達成だ。
 故障から復活したものといまだ途上にあるものとー。勝者は常に一人だけの勝負の世界は果てしない悲喜のドラマを繰り返す。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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