いよいよマスターズ タイガーとマキロイそして日本最強チーム、松山、池田、宮里、小平に期待するマスターズ 武藤一彦のコラム


 春の祭典、第82回マスターズトーナメントは5日(日本時間6日)米ジョージア州のオーガスタナショナルGCで始まる。タイガーウッズがけがから完全復活、5回目の優勝なるか。過去最多の4人が出場する日本選手の活躍は?北アイルランドのロリー・マキロイは、勝てば、4メジャーすべてを手にする生涯グランドスラムの偉業がかかっている。

 

 タイガーがいるだけでトーナメントの雰囲気はがらりと変わった。1年ぶり復帰戦の1月末の「ファーマーズ・インシュアランス・オープン」は、23位。最終日は、松山と同組で12位と一歩譲ったが、「カムバックに向けて順調にきている」と白い歯をのぞかせた。復帰2戦目の「バルスパー選手権」は、地元、フロリダで2位だった。この試合はマキロイ、ジョーダン・スピースが予選落ちするタフなフィールドの中、首位に1打差2位の最終日、14番で一時トップに立つなど見せ場を作った。タイガーは長いブランクから完全復活。「このコースはドライバーを1日に4,5回しか使わなかった。手術だけでもひざ、腰を各4回、入院治療とこの9年間は辛い事ばかり。だが、ようやく自分のゴルフができるようになってきた」と晴れ晴れとした表情を見せた。

 

 パンチショットや大きなガッツポーズがのびのびと自然に出ている。ギャラリーは順位に関係なく群を成して追いかけている。2、3月はプレーオフが多く、月曜にずれ込んだプレーオフもあったのはタイガーショックの現れだったろう。そう、トラがいるだけで恐怖が引き出された。トラの怖さを知っているミケルソンやステンソンの影は薄かった。スランプだったババ・ワトソンが2勝をあげたが、空気を読めない、いや、読まないタイプかダスティン・ジョンソン、ジェイソン・デーらタイガーの本当の怖さを知らない若者たちばかりが目立った。今年のマスターズは、42歳のタイガーと若手の争い。昨年のガルシアやここまで好調のローズではこの流れにサオさすことはできないのではないか、とみる。

 

 賞金王10回、通算獲得賞金1億100万ドルはツアー歴代首位。記録はすべてタイガーのためにある。通算79勝、メジャー14勝記録だけが歴代2位だが、タイガーの中ではそんな記録も時間の問題なのかもしれない。82勝のスニードもメジャー16勝のニクラウスも、もはや過去の人だ。今大会はタイガーの為にある。

 

 タイガーにとって手ごわいのはマキロイと松山か。マキロイには生涯グランドスラムがかかる。全米、全英オープン各1勝、全米プロ2勝。残るメジャーはマスターズだけ。ここ3年は8位、4位、10位。今年は勢いを実績に変える年だ。胸のあばら骨を痛めて苦しんだが、じっくり休めて上昇し始めた。

 

 けがといえば松山が、3連覇を目指した「フェニックスオープン」大会中に左手親指故障のため欠場したのはショッキングな出来事だった。3連覇どころかゴルフ生活を続けられるかどうかの最大のピンチ。が、はやる気持ちを抑え、悲願のメジャー優勝のため6戦を休んだ松山の判断は、今振り返ると正しい選択だった。左手親指の付け根は選手生命を左右するほどの怖い故障で今後も油断できないが、競技生活を賭しても戦わねばならないマスターズに間に合った。運命を賭して戦う時だ。タイガー、マキロイ、そして追い込まれた松山。そこにけがを宿命として受け止めながら戦わねばならない男たちの戦いが浮かび上がってくる。

 

 日本勢は池田勇太が4回目、日本ツアー賞金王の宮里優作、同2位の小平智が初出場、これに7回目の松山を加え2011年以来の大挙参戦となった。4人そろって世界ランクによる自力での出場は史上最強だ。日本ツアーの代表として4人それぞれが自分の目標に向かいひと花咲かせてほしいものだ。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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