米男子ツアー「ヒューマナ・チャレンジ」はカリフォルニア州パームスプリングの3コースで行われ石川遼が出場したが、第3ラウンドで予選落ち、決勝ラウンドへ進めなかった。優勝は、伝説のゴルフ一家の3代目、ビル・ハースで22アンダー。最終ホールでボギーなら7人のプレーオフという激戦を制した。
石川は6アンダーで回りながら最終日へ進めなかった。昨年の優勝スコアが28アンダーという“ロースコア大会”はハーフで27をマークしたライアン・パーマーがトータルでも61を出すなどバーディー、イーグルが乱れ飛ぶ中、石川はいかんせんバーディーが少なかった。ティーショットがブッシュにはいりダブルボギー、肝心のパットでバーディーを逃すことも多かった。何より3コースを使い、始めの3日間はアマとラウンドするという徹底したアマ優先の競技は、さすがの遼君も疲れたのだろう、精彩がなかった。サービス精神旺盛なだけに集中力に欠けたのだろう。
アメリカは想像以上に大変と石川に同情する。技術を高め生活に慣れようと挑戦3年目の石川だが、アメリカになじむということはただゴルフだけをしていればいいということではない。ゴルフではスポンサー第一。そのスポンサーが年に一回、パームスプリングスに集まりトッププロとゴルフを楽しもうというのだ。ただのプロアマではない大会は、プロに徹底したサービスを求めてある意味、過酷だ。ゴルフに集中できない、という意味で地獄といってもいい。
1960年第1回大会優勝のアーノルド・パーマー、第4回優勝のジャック・ニクラウスに敬意を表し、避寒地、パームスプリングスにあるパーマー・プライベートコースとニクラウスプライベートコース、そしてラ・キンタコースの3コースを使ったプロアマ競技が予選になっている。賞金総額570万ドル、約6億7000万円、優勝賞金102万6000ドル、1億2000万円。優勝賞金だけで日本ツアーの平均的賞金総額である。さらに3コースを使い、プロ一人にアマ3人が連日、日替わりで出場する。プロはその3日間、アマをたのしませながら上位70位までに食い込むスコアを出さないと最終日に進めない。つまり賞金にありつけない。この仕組み、ゴルフ以外の才能、たとえば接待とかタレント性、を身につけないと生きていけない厳しい世界なのだ。
前週のソニーオープンの松山英樹の第3ラウンド予選落ちに続き、石川の2015年シーズンのデビュー戦も同じ憂き目となった。若き日本のホープに相次ぐ試練と騒ぎたくはないが、「いやなに、まだシーズンははじまったばかり」と気にしないわけにはいかない。
大会の前身は米最高の喜劇王・ボブ・ホープがゴルフをエンターテイメントの舞台に変えようとスポンサードした「ボブ・ホープ・クラシック」。2012年に現在のスポンサーに変わったが、スケールアップして今日がある。今回優勝したビル・ハースは叔父に1968年マスターズチャンピオン、ボブ・ゴールビー。父親は米ツアー9勝、チャンピオンツアー16勝のジェイ・ハース。今週の優勝でツアー通算6勝だ。今年はメジャータイトルを手にするチャンスが出てきた。
したたかなアメリカ、深い歴史とゴルフへの高い愛着とこだわり。石川も松山もとんでもないところにとびこんで勝とうしている。けなげだ。