遼、復活へ心して立ち向かえ 武藤一彦のコラム


 石川遼が9打差、12位から7アンダー64をマーク、通算12アンダーで5位。日本男子ツアーの「フジサンケイクラシック」は8日、山梨・富士桜CC、パー71)で最終日を行い4打差3位から出た韓国の朴相賢(パク・サンヒョン、36)が6バーディー65、通算15アンダーで優勝した。2位はこの日、石川と同じベストスコア64をマークした岩田寛と変則スイングで人気の崔虎星(チェ・ホソン)とC・キム(米)が並んだ。

 

 3年ぶりに富士桜GCに登場の石川はボギーなしの7バーディー、好調ぶりをアピールし5位に食い込んだ。7,500ヤードを越えるコースは富士山の裾野に位置しロングドライブと正確を求められるセッティングの中、前日ドライバーショットが復調、往年の冴えが戻って危なげなかった。
 「距離が長いモンスターコースで、ドライバーはビッグスコアを出すには大事な部分。今日は昨日、一番悪かったパットをしっかり打てて満足。完全復活を目指し、悪い時でも崩れないゴルフをしっかりとしていくようにしたい。今日はあれだけ悪かったパットを立て直し、悪い時でもアンダーで回れた、満足。」と手ごたえがあったのだろう。大きくうなずいて合格点を出した。
 第3ラウンドの5番からパットのクロスハンドを順手に戻し、この日も順手で通し1、3、6、11、14、15、17番とバーディーを決めた。
 アメリカを撤退した2年前の不安感は完全になくなった。若さにまかせ持てる想像力を思うままに発揮、世界記録の58をマークするなど怖いものなしの時代を卒業、次を目指す27歳に新しいエポックを期待する。

 

 スランプといっていいのかどうか分からないが、この停滞期間。アプローチとパットに石川流、独自のトーン(音)が聞こえ始めた。中でもアプローチは上げて良し、転がしも良し。この日の最終ホールのバンカー越えのロブショットは石川しかできない“石川節”をうたって見ごたえがあった。
 上から打ち込むのではなく左足上がりのライからフェースを開きインパクトでフェースを滑らせ救うようにボールを柔らかく上げた。右傾斜のグリーンに「ポトリ」と完璧な音がした柔らかいタッチと着地と距離感。最高だった。1メートに寄ったが、石川にしかできない“芸当”だった。
 順手に戻したパットには、独自の感覚を状況に応じ使い分けるプロのフィーリング。何も言えない世界だ。グッドラックといい絶妙の世界を楽しませてほしいと祈るばかりだ。だが、マークの仕方には一言。
 前週の「RIZAP・KBCオーガスタ」の最終日、18番で60センチに寄せながら自身のマークをずらしたのを元にリプレースし忘れ2打罰を食った。石川も石川だが、マーカーの木下稜介もあの時点で注意できなかったものか。またギャラリーも何百人が見ていて気が付かなかったというのが信じられない。福岡・芥屋GCは猛暑で知られるコースで、だれも一生懸命見ていなかったのだろうか。
 そんなこともあるのだと遼君には言うしかない。そして、今度マークを動かすことがあったらマーカーはいつもの表向きではなく裏側ですること。リプレースをそうして自分に喚起し忘れないようにするのだ。そのためには裏表にはっきりした絵柄がいい。表は自分の顔、裏には最愛の奥さんの顔を入れておけばリプレースを呼びかけてくれるはずだ。
 石川復活に賞金王。日本ツアーは大事な秒読みに入った。2打罰で下がった順位による“マイナス点”が賞金レースにかかわるかもしれない。順調な復活に向け大事なときだ。小事が大事にならないようあくまで慎重に。今は大事なときとこころせよ。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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