11月のマスターズ 武藤一彦のコラム


 米ツアー、今季メジャー3戦目のマスターズトーナメントは世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(36)=米=が、通算20アンダーのトーナメントレコードで初優勝、16年の全米オープンに次いでメジャーを制した。松山英樹は初日、2日と68をマーク6位の好スタート、悲願のメジャーVに期待を抱かせたが、スコアを伸ばせず8アンダーの13位に終わった。今平周吾は4日間、イーブンパーの44位だった。

 

 コロナ禍の影響で毎年4月の開催が秋に持ち越され無観客開催。大会は第1ラウンドが雷雨中断で第2ラウンドが第3日までずれ込むなど波乱含み。春から秋開催となってコースコンデションの変化も懸念されたが、案の定、コースは湿り、高速グリーンは姿を消した。米南部のジョージアの夏は極暑となりオーガスタナショナルGCは夏の間クローズ。毎年この時期はシーズンに備えて整備を始める異例の大会。名物の高速グリーンにその影響が出た。下りは早いが登りのパットは重く、選手を戸惑わせた。
 そんな中、ジョンソンは世界ナンバーワンの自信とフェードに徹した安定したショットで、まさにひとり王道を行った。最終日は4,5番で連続ボギーをたたき豪州のスミスと韓国、22歳、初出場の任成宰(イムソンジュ)に1打差と迫られたが、慌てなかった。
 13番のアーメンコーナーではティーショットを3ウッドで刻み2打もショートアイアンで刻み3オン、1パットのバーディー。難度の高い14番は一転、豪快なドライバーショット、2打はウエッジショットでバーディーの19アンダー。続く15番パー5は再び手堅く3オン狙いに徹し3連続バーディー。タイガーとスピースの持つ18アンダーの大会レコードを2打も更新した。心憎いほどの手堅さと冷静さは見事だった。
 18番、いつもならスタンディングオベーションで湧くウイニングロードをジョンソンは帯同キャディーの弟、オースチンの肩を抱いて歩いた。オースチンは感極まって泣いていた。楽勝、余裕に見えたのは表面だけ。コロナ禍に開催された異常な大会、緊張と重圧の大きさが伝わった。

 

 松山はメジャーの前週は必ずオープンウイーク、調整に当てるのがパターンだったが、テキサスオープンに出場し優勝争い、2位で大会に臨んだ。冒険だったが、好スタートを切り4日間、存在感があった。臆せず、冒険をしてほしい。決勝ラウンドでは、入れば波に乗れるパットが入らずもどかしかった。ショットが悪くてもパットが入れば、流れを取り戻せるものだ。求める結果は目の前にある。ジョンソン36歳でメジャー2勝目。松山28歳。あと8年もある。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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