ディフェンディングチャンピオン・松山とマスターズ王者・スピースの決戦が始まる・・・メモリアルトーナメントの話題 武藤のコラム


 松山英樹にディフェンディングチャンピオンの座がかかる「メモリアルトーナメント」は、2つの重苦との闘いとなるだろう。タイトルを守る重圧と戦う松山だが、2歳下の同世代のスタープレーヤー、ジョーダン・スピース(米)との争いは次世代を継ぐ若手たちの後継者争い。スピースとのガチンコ対決は、どっちが本当に強いのか、といった下世話な見方に徹すると面白い。

 昨年10月から始まったPGAツアー2015シーズン。松山は開幕戦の「フライズコムオープン」を3位と好スタート、2月の「フェニックス」では優勝争いに絡み、2位と順調。マスターズも健闘して5位に食い込んだ。メモリアル直前の15戦で戦績は2位1回、3位3回、4位1回、そしてマスターズ5位とトップ5に6回。トップ10まで広げると8回も”入賞“した。素晴らしい活躍ぶり、と言っていいだろう。それはかつての青木功の存在感、3勝した丸山茂樹の安定感に勝るとも劣らない。世界レベルのツアー選手として史上3人目の世界レベルの日本人プレーヤーに成長したといえる。

松山の秘策、強化トレで大変身の予感

 2連覇を目指すメモリアルは今季最大のヤマ場だ。2連覇すれば、世界的な快挙。と同時に急成長したマツヤマの名前が世界に確立する。真のトッププレーヤーへ仲間入りだ。

 5月中旬、今年のメモリアルトーナメントに向けたメディアデイがオハイオ州アクロンのミュアフィールドビレッジコースで開催され松山は前年度チャンピオン、そして連覇を目指す主役として当日のホストプレーヤーとして報道陣の質問を受けた。「昨年、米ツアー初優勝という良い経験をさせてもらった大会に再び出場できることは嬉しい。世界で戦っていけるという自信をくれた大会でもう一回勝てるよう頑張る」強い自分を確認するためにも、もう一回勝つ。意欲をもらったのだから恩返し。松山は強い意欲を見せた。

 今大会は3週間ぶりの実戦となる。2週連続してツアーを休み英気を養ったのには強い思い入れがある。メモリアルを含め彼自身メジャーは5戦と受け止めている。世界の選手にとってメジャーは4つだが、松山にはメモリアルも含めメジャーは5つ。6月の全米オープン、7月の全英オープン、そして8月第2週の全米プロまで、目指すメジャー獲得に全力投入していきたい。その中でとった長期休暇である。

 拠点とするフロリダで2週間。松山は飯田光輝トレーナーと体つくり。いや、ここからは憶測。だが、当たらずとも遠からずだろう。なぜなら昨年のこの時期も二人は体力強化を徹底的に行ったからだ。メモリアルの優勝は「深いラフに負けない、強い上体作り」(飯田)だった。アメリカでの生活、厳しい米ツアーを過ごす中で足りないものを補充する生活だ、と二人は受け止めていた。シーズン中の筋トレは間違えば命取り。だが、恐れていては何も起こらない。昨年の快挙は前向きな筋トレの成果であった。実はこの強化トレーング、2015年のプログラム、メモリアルの優勝は1年、前倒しした成果だった。そんな師弟は今年、2連覇を目指し、更なる強化で強く柔らかな体つくりをしたことだろう。今年のメモリアルの松山は大変貌しているはずだ。

 スピースも松山と同じ15戦。そして挙げた成果はマスターズはじめ2勝、2位3回、トップ10入り8回。脅威的な戦績だ。テキサスといえば鉄人ベン・ホーガンだが、スピースを見るたびに誰もが鉄人を思い起こすほど二人は近い関係になった。そう、スピースをホーガンの再来という人が出てきている昨今だ。それほど的外れではない評価、と受け取っている。

 テキサス・ダラス出身の21歳と愛媛出身の23歳。2年前には何の関係もなかったような二人がいま二身一体、見えない糸、不思議な絆で結ばれた。何色の糸、どんな絆かって?決まっている。燃えるような真紅、ライバル心というメラメラ燃える絆だ。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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