石川遼が「ゴルフ日本シリーズJTカップ」に優勝した。第52回を数える伝統の日本一争い。3打差首位でスタートの石川は3アンダー67、通算14アンダーで2位に5打差、メジャー初タイトルを圧勝で飾った。今季日本ツアー7戦で2勝、通算13勝。米ツアーではシードを獲得したものの、苦戦続き。暗雲がたれこめたのを一気に振り払う見事な復活劇だった。すでに開幕した米ツアーの初優勝も見えた。「遼復活、米ツアー優勝への足音」と題しコラムニスト武藤一彦がその可能性を連載で探る。
「1打1打に悔いのないショットを心掛けた。時に弱気が出かけたが、気持ちを強く持ち、緩みの無いスイングに徹した。ほぼ完ぺきにやり通せた」その言葉通りの圧勝劇だった。硬いグリーン、傾斜の読みとタッチはアイアンのスピンコントロールと正確さを問われパッティングの熟練を要求された。石川は誰よりもよく攻め、ピンチをしのいだ。6バーディー、3ボギー、67。メジャー初制覇は8年連続出場の成長の証しだった。過去3位が最高の石川にとって、苦手意識を一気に振り払う収穫となった。
4打差の大量リードを背負った1番で2メートルにつけるバーディーチャンスをいきなりの3パット。同組の小田孔明に3打差に詰め寄られた。だが、3番でバーディー。さらに最難関の4番で5メートルを沈めるバーディーで波に乗った。普段はパー5のホールをパー4として使用する“意地悪ホール”。パーで上がれれば上出来の難関ホールを、300ヤードを越えるビッグドライブ、完璧なアイアンと果敢なパットでバーディーとした。難関の長い9番パー4でアイアンをひっかけるボギー、13番ではティーショットをスプーンで刻み浅いラフに置きながらセカンドをミス、バンカーに入れた。バンカーショットは砂に深く突き刺さりアプローチも2メートルを残しダブルボギーのピンチ。好調なパットで何とかボギーでしのいだが、ダブルボギーなら10アンダーで追い上げる藤本と2打差となっていたところだった。
ピンチをしのいだ後の14番。364ヤードのブラインドホールを300ヤード飛ばし2メートルにつけるバーディー、16,17番もバーディーとした。
ショット前に瞑想した。アドレス前には体幹を意識した素振りを繰り返した。フォローでボールを送り出すニュースイングを静と動のコントロールで制御した。久しく影を潜めていた石川らしさの復活だった。「このゴルフが世界でできると信じて頑張っていきたい。いいきっかけとなったと信じてやっていきたい」年明けのシーズンは1月14日からの米ツアー、「ソニーオープン」(ハワイ・ワイアラエCC)から。
舞台、東京よみうりCCは改造して2年。新種のベント芝はようやくなじみスティンプメーター13フィートの高速グリーンとなったのも米ツアー選手の石川に幸いした。ツアー2勝は井上誠一設計というめぐりあわせも石川にとってのプラス要素だった。このゴルフが世界で通用するのか。それらは次回。