池田のピンチは日本ツアーのピンチ 武藤一彦のコラム


 池田勇太の日本オープンは2位に終わった。第88回日本オープンは、10月17日、滋賀・琵琶湖CCで最終日を行い、2位に5打差、首位のショーン・ノリス(南ア)が1アンダー70、通算19アンダーのトーナメント記録で逃げ切り優勝。逆転を狙った池田だったが、4アンダー67をマーク、一時は3打差に迫ったが、第3ラウンドの出遅れが最後まで足かせとなってしまった。

 

 最終組のノリスを追い2組前で猛追。「悪いラウンドではなったが、バーディーの数が足りなかった」と悔しがった。ティーショットを刻む徹底的な逃げに徹したノリスがプレッシャーに苦しんでいただけに、勝負の3日目についた7打差は重かった。
 池田には14、17年に次いで大会3勝の偉業がかかっていた。プロ入り2年目の2009年以来続く連続優勝記録を22勝に伸ばし、日本ツアー史上7人目の永久シード入りに大きく前進という偉業は後日に持ち越された。コロナ禍で20-21年シーズンが合体したシーズンは残り5戦。今季いまだ未勝利、なんとしても優勝がほしい勇太、正念場にきている。

 

 1985年12月生まれの35歳。学生ゴルフ界の雄、東北福祉大のエースとして日本ナショナルチームをけん引。プロ入りし石川遼との競り合いでプロゴルフ界をわかせ、松山英樹、金谷拓実の育つ下地を作った功労者だ。が、いま、情勢は厳しい。若手が育つのは喜ばしいが、ライバルの成長はもろに自らの戦歴に跳ね返ってくる。そこにもってきて今回のノリスである。ラグビー、クリケットなどスポーツ万能、188センチ、100キロの南アの巨人は平均パット率で19年首位、賞金ランキングは2年連続の2位だ。今大会の優勝で7位と賞金ランクでトップ10入り、何より自信という武器が加わった。
 加えてチャン・キムがいる。米移住、アリゾナ州立大を経て、14年日本ツアーのQTトップ合格、19年ドライビングディスタンス315ヤード越えは日本ツアーランク首位の飛ばし屋だ。188センチ、102キロ、腰痛に苦しんでからは正確性重視の手堅いゴルフ。と、言えば、ノリスと同タイプ。20年のゴルフ日本シリーズで日本ツアー伝統の公式戦タイトルをかすめ取っていった。
 池田の11シーズン連続優勝記録は大丈夫だろうか?池田のピンチは日本ツアーのピンチである。あと残り5戦、日本ツアーは正念場を迎えた。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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