宮里優作が何かを起こすとしたら日本シリーズ? ゴルフの怖さ、難しさとは・・・ 武藤のコラム


 世界の主要ツアーは11月22日、3ツアーが閉幕した。日本の女子ツアーはイ・ボミが「大王製紙エリエール」で今季7勝目をあげ初の賞金女王。シニアの賞金王は室田淳が2年ぶり4度目の返り咲きとなった。

 欧州ツアーではロリー・マキロイ(英国)が最終戦の「世界選手権ドバイ」で今季3勝目、通算15勝目を挙げ2年連続3度目の賞金王を決めた。今季はスキーで右足首を骨折し米ツアーでは振るわなかったが、ホームツアーでしっかり存在感をみせるあたり、やはり世界ナンバーワンだけのことはある。

 室田の60歳での賞金王は最高齢記録だ。先に終わった米チャンピオンツアーでは58歳のベルンハルト・ランガ―(独)が7回目の賞金王になったが、その年齢記録を大幅に上回った。シニアツアーは50歳の誕生日をもって出場資格ができる、当然のことながら若い、50歳のルーキー。次いで51歳にタイトルが集中する“若者世界”。60代に入ってからは年間1勝するのすらまれなのに室田はシーズン4勝と他を圧倒した。すばらしい。

 米ツアーはジョーダン・スピースが、2014~15年シーズンのフェデックスポイント王者、最優秀選手賞に選ばれ、10月、早くも2015~16年シーズンに突入した。

 残すところ日本男子ツアーと米女子ツアーが残っているが、日本ツアーは「ダンロップフェニックス」で宮里優作が勝ちあと2戦「カシオワールド」と「日本シリーズJTカップ」を勝てば、という条件付きで逆転劇が期待できる。米女子は韓国系ニュ―ジーランド人のリディア・コが賞金レースをリード。日本男子の金庚泰とあわせ韓国の強さには頭が下がる。

 ゴルフはミスのゲーム。勝者だけを見ていると何をやってもうまくいっていてわからないが、選手個々はミスをいかに最小限にとどめるかに力を注いでいる。ワンショットにはルーティーンも含めて2、3分しかからないのにコースには4時間近くいて、その間は頭を使う。この思考の時間に人は恐怖や疑い、迷いといった邪念に惑わされる、と言われる。選手は安定した状態でいられないことを知っているので、怖くてしかたがない。それがゴルフを難しくするのだ。

 22日、早くも開幕した米ツアー7戦「RSMクラシック」(ジョージア州シーアイランド・リゾート)最終日。岩田寛のプレーを見て、ゴルフの難しさをつくづく感じた。昨年、シード権を獲得、いま米ツアーで頑張る岩田だが、この日はスコアが伸びず通算6アンダーの44位に終わった。2日間を終わって5位と好スタートを切ったものの、決勝ラウンドに入ってパットが湿った。

 優勝した地元のケビン・キスナーが23アンダーと突っ走るのと比べるといかにもバーディーが少なかった。大会前のフェデックスポイント178位を急上昇させる絶好のチャンスだったが、ポイントランクは少し上がっただけの152位。これでは来年から再開されるシーズンの出場権が遠のいてしまうピンチとなった。

 岩田にとってはこの7戦は来年の試合出場をかけたぎりぎりの戦いだった。リランキング制度というのがあってこの7戦の成績で124位以内にいないと年明けからの試合に出られない。152位では上位選手が疲れてスキップし空きができないと試合に出ることが難しい。

 「パーパットは入るのだが、バーディーパットがはいらなかった」-ゴルフの難しさを恨んだ。いいゴルフをしてもスコアは伸びない。結果がついてこないもどかしさからどう立ち直るか。

 宮里が何か起こすとしたら、こういう絶体絶命の時が良い、と勝手におもしろがっている。「カシオ」「日本シリーズ」とあと2戦。日本ツアーは終盤のヤマ場で賞金ランク1位金庚泰と2位に急上昇した宮里優作の差は6401万円。残り2試合の優勝賞金は4000万円が2つ続く。35歳、優作に勢いがついた。何かが起こるとしたらと手をこまねいている。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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