松山よ、世界の壁をたくましく乗り越えてくれ 武藤のコラム


 米男子ツアー最終戦の「ツアー選手権」は23日、ジョージア州アトランタのイーストレーク・ゴルフクラブ(7385ヤード、パー70)で最終日を行い3人プレーオフの末、ローリー・マキロイ(英国)が優勝した。シーズンを通した積算ポイントによる「フェデックスポイント」も首位のダスティン・ジョンソン(米)を逆転、王者に輝いた。首位から3打差、好スタートを切り優勝を期待された松山英樹(24)=LEXUS=は首位から4打及ばず5位に終わった。トップ30人しか出場できない大会に3年連続出場、終始上位で争っての大健闘だった。

 

 12アンダーのライアン・ムーア、ケビン・チャペルのアメリカ勢とマキロイに絞られた優勝争い。伝説の名手、球聖ボビー・ジョーンズを生んだイーストレークGCは今年、アウトとインを入れ替え、世界一を選ぶ格好の舞台となった。

 

 4ホールに及ぶプレーオフは第1ホールの18番パー5、マキロイが2打目を1メートル半につけるイーグルチャンス。だが、パットを外し混戦となった。チャペルは1ホール目で脱落、ライアンとのマッチは4ホール目の16番、パー4。このホール、本番で第2打を入れるイーグルで調子を上げたマキロイが、プレーオフでも6メートルのバーディーパットをねじ込みラッキーホール、熱戦に終止符を打った。

 

 27歳。北アイルランド出身の天才ゴルファー。シーズン前半は調子を崩しジェイソン・デー(豪州)、ジョーダン・スピース(米国)、ダスティン・ジョンソン(米国)の後塵を浴び続けたが、プレーオフシリーズ第2戦の「ドイツ銀行選手権」で優勝、大詰めで波に乗った。プレーオフはショットで完全にライバルを圧し今季、クロスハンドとノーマルグリップで迷い続けたパットも勝負所で安定した。プレーオフを勝たないと今大会6位のジョンソンが総合優勝となるぎりぎりの状況だったが、見事ひっくり返した。最終戦で奇跡的な逆転劇は、あのタイガーを彷彿させるオーラがあった。世界ランキング首位に返り咲きパワーゴルフで世界を圧倒。来季は、そんな予感がある。

 

 松山は最終ホールで5オンの2パットでダブルボギーと力尽きた。「ショットが良くない。思うショットが打てるようまたがんばる」と来季をにらんだ。だが、あのホールは難易度16番目、バーディーが絶対必要なホールでのダブルボギーはいけない。

 

 今季シーズン初めの「ウエストマネージメント・フェニックスオープン」で幸先のいい2勝目をあげた。世界ランクトップのデーと最終組を回った「メモリアル・トーナメント」も見ごたえがあった。だが、全米オープン、全英オープンと予選落ち、全米プロでの4位で立ち直ったように見えたが終盤の「ウインダム選手権」で予選落ちするなど不安定だった。「パットが…」「アイアンが…」と技術面での反省が口をついた。しかし、ここを乗り越えての、世界であろう。

 

 力尽きてダブルボギーをたたく同じコースで、3人もがプレーオフに残り、2人は死力を尽くし4ホールを戦った。松山と世界との厚く高い壁を感じた。たくましく乗り越えてほしい。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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