畑岡奈紗、渋野日向子の日本女子のエース2人の全米プロは何かが起こる 武藤一彦のコラム


 米LPGAツアー「ショップライト・クラシック」は日本女子のエース、畑岡奈紗、渋野日向子に期待したが、畑岡は4位、渋野は27位に終わった。畑岡は2日目に首位に立ち最終日は逆転を目指す健闘も4位。渋野は初日、ハーフ29の好スタートをきりながら27位と伸びなかった。優勝はイングランド出身の33歳、メル・リード。欧州6勝のあと今季米ツアーに参戦、初優勝を19アンダーのビッグスコアで飾った。日本勢は、他に河本結が4アンダー40位、上原彩子は1アンダー54位だった。

 

 大会は10年前の2010年大会、宮里藍がシーズン4勝目をあげ世界ランクトップに躍り出た日本人にとって忘れられない大会。当時、25歳の誕生日を6月に迎えたばかりの宮里は、今回とは別のニュージャージー州、ドルチェ・シービー・リゾート大会の最終日、2打差2位から出て3ホールで首位、10番で首位に立ち優勝した。米女子ツアーがタイ、シンガポール、メキシコで開催した米ツアー海外戦に勝った宮里の破竹のシーズン4勝。1987年岡本以来の日本人最多4勝と並ぶ快挙。宮里にとっては初優勝が09年、フランス開催のエビアン・マスターズと過去4勝はすべて米国外での優勝だったため思い出深い米国内での初優勝となったのだった。

 

 畑岡にとって最後の米ツアー優勝は19年3月。以来1年7か月優勝から遠ざかる。今季は過去2回の2位ともう一歩で優勝を逃しているだけに想うところがあった大会。アウトは2番でボギーをたたいたが、その後4バーディーと挽回、期待を抱かせた。しかし、インで10,12,14番とボギー。「ショットのリズムが悪くなった、2アンダーで4位はキープできたが、自分では5オーバーを叩いた感覚です」と唇をかんだ。
 渋野はパットの感覚が戻らず苦しんだ。パー5で2オンするが、3パット、チャンスは入らずゴルフに無駄が目立つ。「パットのラインが合わずタッチが出ない。ラインに乗ればショートする」とお手上げ状態だ。「アメリカに来てから4週間、山火事騒ぎで試合短縮だなど集中できていなかった。ポワナにもやられてます」と苦笑した。中西部独特といわれるスズメノカタビラ系の混じるグリーンは芽のそろい方がまちまちでなじめない、と笑顔も陰りがちだ。

 

 次週は、今季メジャー3戦目の全米女子プロ選手権(10月11~14日・アロミニンクGC)。畑岡は「今季はメジャー前週の試合を調整と位置づけずメジャーに向けた前哨戦として全力投入。ショップライトの4位はその意味で大きい。あと一週に気を緩めずこの調子でぶつかる」渋野は「今週で初めてアメリカにきて落ち着いてプレーできた気がする。芝とパットの距離感をとりもどして次週にかける」ときっぱり。この際だ。藍ちゃんの笑顔でも思い出して奮起してもらいたいものだ。メジャー目前で何度も足踏みした畑岡と昨年の全英女子オープンチャンピオンがそろって挑む女子メジャーは、恰好の舞台だ。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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