混迷の松山パットに光明 武藤一彦のコラム


 米男子ツアーの世界選手権シリーズ「ワークデイ選手権」(フロリダ州ブラデントンのコンセッションGC、7474ヤード、パー-72)の松山英樹(29)は5差7位から逆転を狙ったが、15位に終わった。3バーディー、3ボギー,1ダブルボギーの74を叩いた。松山といえば最終日の平均スコアが60台と米ツアーデータで傑出した戦績を誇り、“追い上げの名手”と高い評価を得たものだが、最終ホールで第2打を池に入れるダブルボギー。得意のアイアンショットのミスは信じられなかった。
 優勝は日系、24歳のコリン・モリカワ(米)で18アンダー。昨年の全米プロでは“メジャー獲り”の先を越され、今度は10打差がつく屈辱となった。自己の持つ米ツアー5勝にもあと1勝と迫られた。「5番のスリーパットボギーといい、最終ホールといい今の状況を象徴している。肝心のところでショット、特にここ何年も自分の思うパットができていない」とため息をついた。

 

 松山、混迷の連鎖の中へ迷い込んだか。心がチクリと痛む。
 コロナ禍で日程が狂った米ツアー。9月に行われた全米オープンでも首位から5打差、4位から最終日78を叩き17位に急降下した。11月のマスターズも10打差8位から最終日、アウトでバーディーを重ね追い上げ体制に入った、と思われた瞬間、10,11番でボギー,ダブルボギーと自ら追い上げの芽を摘んでいる。パットの不振がきっかけとなって、ショットにも暗雲が垂れ込めた。ホールアウト後3時間、4時間と練習場で過ごす努力が続く。不振を振り払おうとあらゆる可能性を追求、キャディーをかえいまスイングコーチも代えた。だが、データは正直だ。ドライバーの飛距離日297・6ヤードは95位、フェアウエーキープ率62・91%、80位。グリーンヒット率67・80%の98位。パットの不振は自らへの不信感、不審にもつながっていま、混迷のさなか。そう、それでもワールドランキングは23位だ。
 今週、パットは光明が見えていた。構え方を変え両脇を締めた。両手が一体になりテークバックがスムースに上がり第3ラウンドまでは往年の安定感があった。パターの始動が出来ず、ソールで芝を何度もたたかないと上がらなかったブレードが、気持ちよく動いていた。難があったパッティングに光明と思いたい。パットで落ち込んだスコアメイクの狂いだ。パットで取り返せばいい。次週は引き続き米で拠点を置くフロリダ、3月4日からの「アーノルドパーマー招待」。ここからの1か月だ。目指すメジャー「マスターズ」は4月第1週。まだたっぷり時間がある。じっくりパットを磨いてほしい。

 

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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