さくら、ようやくフル回転に期待。これなら優勝も夢ではない 武藤のコラム


 米女子ツアーの「スインギングスカートLPGAクラシック」の横峯さくらは11位に食い込んだ。日没が早いこの時期は大会出場者数が減るため出場資格がなく、わずか3人の出場枠を100人余で争うマンデートーナメントでようやく獲得したさくらだったが、2日目に3位につけるなど“見せ場”たっぷり。待望のエンジンフル回転は近いとみる。

 「今大会は2日目に優勝争いの好位置にいながら3日目に77もたたきふがいなさを感じた。今日は主人とめざす平均ペースのゴルフをしてアンダーパー(71)で回れた。欠点の上がり下がりの極端に激しいゴルフ是正がテーマなのでうれしい」

 “主人が”、“主人と”と随所に夫・森川陽太郎さんの名が出て新妻らしくほほえましい。米ツアーを主戦場と決めメンタルトレーナーの夫と挑むLPGAツアー。全32戦中の10戦目の今週は米国内6戦目、サンフランシスコ郊外レイクマセドGCの4日間競技だった。

 試合はモーガン・プレッセル(米)がリディア・コ(豪州)に最終ホールで追いつかれ2ホールのプレーオフの末敗れ7年ぶりの優勝を逃した。韓国系オーストラリアンのコは本当にしたたかで7勝目。これで逆転勝ち5回。24日に18歳の誕生日を迎えたばかり。ほんとに強い。世界ランキングトップの座は当分揺るがないことになる。3位にはブルーム・ヘンダーソンというカナダの新人が入った。17歳。マンデーで出てきていきなり優勝争いし“世界の広さ”を痛いほど印象づけた。さくらの11位は最終日最終組で崩れ8位に終わった「KIAクラシック」の8位に次ぐ戦績だった。

 さくらの米ツアー。これまでメジャーなどスポット参戦してきたのを一転、本格参戦したことに、実は驚いた。なぜなら、藍ちゃん、しのぶ(諸見里)がいち早くアメリカをめざし実行にうつしたときも「日本が私の居場所」とどっしりと動かなかった。父でコーチの良郎さんは「日本ツアーは黄金ツアー、選手層は厚いし賞金は高額。これをほうりだしていく手はない」と明快だった。その見解は、韓国勢の大挙日本参入となっての“韓国ブーム”。もし横峯がいなかったら、日本ツアーは韓国勢に圧倒されて今よりさらに無残な姿になっていただろう。

 さくらの挑戦は遅きに失したかとも思ったが、結婚し好伴侶を得てのちの行動なのがいいと思う。親離れもできた。日本での実績は言うまでもない。このケースはかつての日本のトップたち、樋口、岡本、小林、福島がたどった足並みだ。力を蓄えのちに世界をめざす、のだ。

 今週はパットが入らずもったいなかったが、ゴルフはそうしたものだ。ショットが良ければパットはいらず、スコアが伸びればトラブルがやってくる。さくらは「毎週初めてのコースで毎試合を安定したゴルフをめざすのがテーマ」というが、素晴らしい目標設定。一喜一憂せずやっていると突然、女神は褒美をくれる。それがゴルフだ。

 大会後、テキサスに飛んだ。出場枠が回ってくるかどうかわからないが、どうやら「ノーステキサスLPGAシュートアウト」には出場できそうだ。藍、美香のシード選手は一週休んで日本のメジャー「ワールドレディース」(茨城)にでるが、条件付きシード、“格下”のさくらはわき目も振らず前をめざす、アメリカで。

武藤 一彦(むとう・かずひこ)
ゴルフジャーナリスト。コラムニスト、テレビ解説者。報知新聞には1964年入社、運動部に所属、東京オリンピックはじめボクシング、ゴルフ、陸上担当。編集委員、専属評論家も務めた、入社以来50年、原稿掲載の”記録”を現在、更新中。
日本ゴルフ協会広報参与、日本プロゴルフ協会理事を経て日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員、日本ゴルフ振興協会広報メディア委員、夏泊ゴルフリンクス理事を務める。

ゴルフは4メジャーのほか、ワールドカップなど取材、全英オープンは1975年から取材し日本人記者のパイオニア的存在。青木功のハワイアンオープン優勝にも立ち会った。1939年生まれ。東京都出身、立大出。

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